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第5回フォーラム「ずっと住みたいまち」を自分たちでつくる——こまち広場しが2025、堂々完結!

  • yasashiikotsushiga
  • 1 日前
  • 読了時間: 35分

更新日:1 時間前



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2025年11月30日に彦根勤労福祉会館で「まちと交通の未来づくりフォーラム ずっと住みたい幸せのまちを目指して」の最終回が行われました。

8月から11月にかけて5回(実質13回)に渡って開催されたフォーラムの締めくくりとして、「第5回 自分たちでつくる、住み続けたいまち」というタイトルで開催されました。

参加者は関係者を含めて74人。滋賀県内のみならず、神奈川、富山、愛知、岐阜、三重、京都、鳥取、福岡と、全国から交通まちづくりを進める市民の方、交通事業者の方などが集まりました。

エシカルライターSariさんによるリポートです。



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今回もFMしがのパーソナリティでお馴染みの井上麻子さんの温かい司会進行で始まったフォーラム。プログラムに沿ってダイジェストでご紹介していきたいと思います。


目次

  1. 開会挨拶

  2. 基調講演「移動貧困からの脱却 誰もが困らないで移動できる社会とは?」

    1. 祖母の免許返納が教えてくれたこと

    2. スイスで目撃した「個人を中心に設計された社会」

    3. 「住み続けたい街」を阻む見えない壁

    4. 小さな行動から始まる未来

  3. 報告「みんなが支える地域交通 滋賀地域交通ワークショップから」

    1. 「みんなで支える」の意味を問い直す

    2. 合意形成という言葉への違和感

    3. ワークショップで見えた共通認識

    4. 負担をめぐる多様な意見

    5. 滋賀県内の先進事例―琵琶湖を挟んで知られざる実践

    6. 分断を超えて、大目標を見失わないために

  4. 日野・彦根・草津フィールドワーク報告

    1. 日野フィールドワーク報告

    2. 彦根フィールドワーク報告

    3. 草津フィールドワーク報告

  5. トークライブ1 「住み続けたいまちと交通をどうつくるか」

  6. トークライブ2「まちづくりと交通の広場しがからの提案を受けて」

  7. ワークショップ「暮らしたい未来のまちを考えてみよう」

  8. まちづくりと交通の広場しがのみんなで目指すもの

  9. 最後に




1.開会挨拶

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まず、やさしい交通しが代表で関西大学教授の宇都宮浄人氏から開会の挨拶がありました。

「この取り組みは2021年にコロナ禍での『人と環境にやさしい交通をめざす全国大会 in 滋賀』のオンライン開催から始まりました。2024年に近江鉄道が上下分離されることになった際、地域の交通になるにもかかわらず、鉄道や交通を使ってまちを盛り上げる雰囲気が弱いのではないかという危機感から活動が本格化しました。

2023年には団体を設立して近江鉄道の沿線でフォーラムを開催し、『近江鉄道をどうするか』ではなく『近江鉄道で我々は何をするのか』という視点で議論を展開しました。2024年には、そこで集まった仲間たちが実際に企画を実行に移し、近江鉄道のガチャフェスでバルを出す企画や駅前の模型制作などを行いました。

現在、滋賀県が地域交通計画を策定するにあたりワークショップなどを開催していますが、まだまだ一般の人たちへの広がりが足りないという認識のもと、今年度は私たちも滋賀県全体に活動を広げ、8月に第1回フォーラムを開催し、その後フィールドワークを日野・草津・彦根の3地域に分かれ3回シリーズで実施してきました。本日が第5回のまとめとなりますが、まとめる必要はなく、これはきっかけに過ぎません。継続的な活動へと繋がればと思います」

宇都宮浄人代表はこのように話して、やさしい交通しがの取り組みの経緯とこれからの展開に期待を募らせました。

 


2.基調講演「移動貧困からの脱却 誰もが困らないで移動できる社会とは?」

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それから、モビリティジャーナリストの楠田悦子さんより基調講演がありました。

楠田さんは兵庫県加西市出身で、現在は神戸在住。フリーランスのモビリティジャーナリストとして、ウェブ記事の執筆、書籍の出版、各地の交通検討会の委員、企業への相談・提案など幅広く活動しています。そのきっかけは、自動車新聞社で働いていたときに兵庫県西宮市の交通に関する検討会に声がかかったことでした。


祖母の免許返納が教えてくれたこと

活動の原点には個人的な体験があります。祖母が免許返納した後、買い物にも行けず寂しそうにしている姿を見て、同じように困っている人たちのために何とかしたいと思ったそうです。その思いから「移動貧困社会からの脱却」という書籍を執筆されました。

 

スイスで目撃した「個人を中心に設計された社会」

スイス留学の経験も大きな転機となったといいます。そこで目にしたのは、日本とは全く異なる社会の仕組みでした。障害のある人が制約なく生活でき、周囲がサポートする環境、短い労働時間で自由な働き方ができること、そして個人を中心に社会の仕組みが設計されていることに衝撃を受けたそうです。

特に印象的だったのは交通システムの違い。日本ではバス、鉄道、タクシーがバラバラに計画されているのに対し、ヨーロッパでは全体的に設計され、移動手段が戦略的に配置されていたとのこと。日本では各交通事業者が個別に事業を行っているため、全体的なまとまりがないように感じられるといいます。

楠田さんは現在、自転車の通学路整備にも力を入れています。小学校の通学路は整備されていますが、中高生の通学路は市町村をまたぐため管理が難しく、事故で亡くなる高校生もいるという深刻な状況です。滋賀県は平坦な地形なので、自転車をもっと活用すべきだと提案しています。

また、2026年初めに発行予定の書籍では、フランスの先進的な交通計画を紹介する予定だそうです。フランスではデータに基づく地域交通計画が作られており、交通だけでなく都市計画、商業施設、学校、観光施設などが全体的にネットワークで繋がっています。さらに、大学で交通を学ぶ人材育成プログラムがあり、その専門家が自治体や交通事業者に提案できる力を持っているそうです。

フランスが参考になるのは、地方都市が賑わっているからだといいます。地方への移住が進み、子育て世代が住んでいる。人口はフランスより日本の方が2倍多く、面積は日本の方が小さいのだから、まだまだできることはたくさんあるはずだとお話がありました。



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「住み続けたい街」を阻む見えない壁

講演の後半では、住み続けたい街を作るための具体的な課題を提示しました。女性も働く時代に仕事と子育てを支えられる地域になっているか。65歳で退職した後の35年間をどう過ごすか。通勤時間の問題も重要で、財務省総合研究所のデータによると「夫の通勤時間が10分長くなると第2子が4%減る」という衝撃的な事実が紹介されました。

学校の統廃合も大きな問題とのこと。学校区域ごとに発展した地域の機能や移動が変わってしまうのに、それに合わせて交通が再編成されているでしょうか、と問題提起されました。最近は徒歩や自転車で通学する子どもが減り、親が車で送迎するケースが増えていると。片道30分かけて送迎し、また迎えに行き、塾の送迎もする。そんな地域に子育て層は住みたいと思うでしょうか、と。

教育費の問題も指摘しました。大学4年間の費用は、授業料より家賃や生活費の方が高いのです。つまり、自宅から通える大学があれば、経済的負担は大きく軽減されます。

医療アクセスも重要です。出産時に30分以内に産院に到着できるか。買い物はできるか。これらをきちんと調査する必要があります。

高齢ドライバーの問題はこれからさらに深刻化します。これまでは男性が免許を持ち女性は持たない傾向でしたが、これからは男女とも免許を持つようになるため、高齢ドライバーが急増します。安全な車社会を作らなければ、買い物すらできなくなってしまいます。

 

小さな行動から始まる未来

最後に楠田さんは、会場にいる参加者たちを「仲間」と呼び、小さなことでもいいからアクションを取ろうと呼びかけました。例えば、親心で子どもを車で送りたくなっても、あえて電車やバスを使ってもらう。登校が大変そうな人を送ってあげる。そうした小さな行動をみんなで積み重ねていくことが大切だと訴えて、講演を締めくくりました。

 

3.報告「みんなが支える地域交通 滋賀地域交通ワークショップから」

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そのあと、滋賀地域交通ワークショップコーディネーター、水色舎代表の佐々木和之氏より報告がありました。

 

「みんなで支える」の意味を問い直す

「みんなで支える地域交通」というタイトルに込められた意味を、佐々木さんは慎重に解きほぐしていきます。多くの参加者を集めたワークショップで最も大切にしたのは「意見の重なりを見る」ことでした。

参加者全員が異論なく一致したのは「移動できる手段を確保する」という点だったそうです。ここでいう手段には自家用車も含まれます。しかし、その支え方、つまり方法論になると、意見は分かれていったといいます。この分岐点こそが、議論の本質的なポイントだと佐々木さんは指摘します。

ワークショップは、滋賀県が策定したビジョンをもとに、県内6地域で2回ずつ、今年はさらに1地域でワールドカフェ形式で開催されました。そこで集められた声は、滋賀地域交通活性化協議会や税制審議会へと届けられています。

 

合意形成という言葉への違和感

佐々木さんは「合意形成」という言葉に馴染めないと率直に語りました。「皆さん、折り合いをつけているわけですよね。本音で言ったら、合意って何なんだろう」。その答えはまだ出ていないといいます。

しかし、交通や子育てなど様々な分野でワークショップを重ねるうちに、必ず重なる部分が出てくる。「ここまでの思いは一緒なんだな」という共通点を大事にすることが、佐々木さんの基本姿勢です。意見が分かれるところはある。地域や状況によっても変わる。その違いを見極めながら、案を作っていくことが重要だと考えています。

 

ワークショップで見えた共通認識

参加者から出た意見には、いくつかの重要な共通点がありました。まず、まちづくりとコミュニティを一体で考えるべきだという指摘。交通だけを取り出しても有効な議論にならないという認識は、研究者からも示されました。

特筆すべきは、鉄道に関する意見です。佐々木さんは「JR線をなくせと仰った方はいなかった」と強調します。赤字路線については廃止すべきという極端な意見が出るかと予想していたそうですが、実際にはJR線は残すべきという点で確認できたことは大きな成果だったと話しました。

その他の重なりとして確認できたのは、高齢者や障がい者のためのドアツードアの移動支援、バリアフリー化、運転手不足への対応としての自動運転導入など。これらはどの会場でも共通して出てきた意見だそうです。

 

負担をめぐる多様な意見

一方で、意見が分かれたのが負担の問題です。何らかの負担を受け入れる人がいる一方で、「社会保険料と合わせると給料の50%近くを取られている状態なので、次の世代のためにこれ以上負担は増やしたくない」という意見もあったといいます。ここには様々な考え方があることを、佐々木さんは冷静に受け止めています。

地域ごとの違いも明確でした。住民同士の支え合いを始めたい、あるいはすでに実践しているという地域もあれば、デマンド交通の充実を求める声、既存のデマンド交通が活躍しているという報告もありました。



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滋賀県内の先進事例―琵琶湖を挟んで知られざる実践

ワークショップでは、県内で「みんなが支える」実践例も共有されました。

まず紹介されたのが「余呉バス」です。2008年、旧余呉町(現・長浜市)で路線バスの維持が困難になった際、地域交通再編の研究会が立ち上がり、地域ぐるみで支えることになったそうです。驚くべきことに、設立したのは住民7名。バス会社から事業を引き継ぎました。しかし、この素晴らしい取り組みを知る県民は限られているのが現状だといいます。余呉バスの関係者もワークショップに参加し、現在直面している課題についても語られたそうです。

大津市の山間部では「コミュニティカーシェアリング」が実践されているという例も挙げられました。ボランティアがスーパーや医療機関への送迎を行い、車は借り物。利用者から集めたお金で賃借料やガソリン代を賄う仕組みです。実践者の言葉が印象的だったといいます。「これは移動手段だけじゃなくて、新住民と旧住民が顔見知りになったり、コミュニティづくりに貢献している」。移動支援が、地域の絆を紡ぐ装置にもなっているのだと佐々木さんは話します。

和邇のコミュニティバスは、軽車両を使った定路線型のワンボックスカーを無償で運行しています。最近ではクラウドファンディングで資金を募り、成功を収めました。良い悪いの判断ではなく、こうした取り組みが存在することを知ることが大切だと佐々木さんは語ります。

ただし、これらの事例には課題もあります。地域が離れると全く知られていないのです。特に琵琶湖を挟んで反対側の取り組みは、ほとんど共有されていません。今回のワールドカフェ形式による情報共有は、その壁を超える試みでもあった、と説明がありました。

 

分断を超えて、大目標を見失わないために

これらの事例を見て、佐々木さんが確信したことがあります。意見の重なり、実現できる仕組み、そして行政との連携。単に繋ぐだけでなく、双方向の関係性を築かなければ実現しないということです。

今後、交通税の議論が大きく報道され、SNSでも話題になるでしょう。佐々木さんが最も懸念しているのは分断です。「どちらに転んだとしても、導入されてもされなくても、それだけで目標が全て達成されるわけではない」と強調します。

コミュニティづくりをどう進めるか、ボランティア活動を支えるための法制度やエリアの問題をどうクリアするか、運転手不足にどう対応するか。様々な課題が山積しています。単一の施策だけで全てが解決するわけがありません。

「自分と正反対の意見を持っていても、真剣に地域の将来の移動手段や負担のあり方を悩んだ末にその意見を表明されている」。ワークショップを通じて参加者に共有できたのは、この認識だと佐々木さんは言います。

バックグラウンドで共有できないものはそれほどありません。相手も真剣に考えているし、自分も真剣に考えています。ただ、取りうる手段が違うだけだ。埋められる溝と埋められない溝はあるかもしれない。しかし、大目標だけは見失わずに、一緒に歩み寄れるところを探していく。それが、ワークショップが目指した姿だと話して締めくくられました。

佐々木さんの報告は、これから様々な議論が出てくる段階に入る中で、私たちが目指すべき目標を見失わないための羅針盤となるメッセージだと思いました。滋賀県内で一生懸命取り組んでいる人々の実践を共有しながら、次のステップへと進んでいく。ワークショップの成果が、そのための土台になることを願います。

 

4.日野・彦根・草津フィールドワーク報告

次に、8月から11月に渡って彦根、日野、草津で行われたフィールドワークについて、それぞれの担当より報告がありました。

 

a. 日野フィールドワーク報告

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日野エリアを担当したのは日本鉄道マーケティング代表の山田和昭氏。「日野フィールドワークには2つのテーマがありました。交通を体験すること、そして賑わいづくりを体験すること」。山田さんが報告した日野町のワークショップは、座学ではなく「体験」に重きを置いた、ユニークな試みでした。

 

街外れに駅ができた町の物語

日野町には特徴的な歴史があります。日野商人が近江鉄道に出資し、地域の人々が寄付をして駅を作りました。ところが建設費が大幅に足りず、ショートカットした結果、街外れに駅ができてしまったのです。お金を出したのに、街外れに。そんな苦い歴史を持つ町です。

それでも住民は駅を諦めませんでした。駅舎が取り壊されそうになった時、保存活動を行い、コミュニティスペースに再生しました。駅カフェに「日替わり店長」という制度を導入したところ、急に活気づき、今では駅前で大イベントが毎年開かれるようになりました。

 

「鉄道があるのに交通不便地域」という矛盾

しかし町の変遷は複雑でした。自動車社会になると国道沿いにロードサイド店ができ、街の中心が移動。工業団地が駅から遠いところにでき、住宅団地も駅から離れた場所に。典型的なスプロール開発が起きていました。

その結果、鉄道がありながら交通不便地域になってしまったのです。1時間に1本しか列車が来ない。路線バスも徐々になくなり、コミュニティバス、AIデマンドバスへとモードチェンジが起きました。住宅団地、工業団地、観光拠点、高校が見事にバラバラに散らばっている状況でした。

 

「乗ったことがない」から始まる学び

「公共交通を考える時、絶対に現場に行かないとダメ」と山田さんは強調します。1回目のフィールドワークでは、町会議員や地域の方々に実際にバスと電車に乗ってもらいました。今まで1回も乗ったことがないという人がほとんどでした。

「皆さん自分で時刻表を見て調べて乗ってください。午後1時までに帰ってきてください」と伝えると、見事にみんな引っかかりました。バスに乗り遅れる、乗り間違える。近江鉄道の構内踏切は電車が出る直前に閉まって、乗りたい列車に乗れなくなる恐ろしい罠もありました。

「乗るのって結構容易じゃないんだよっていうこと、実際に使ってる人ってこういう気持ちなんだってことを味わっていただいた」。この体験をワークショップで共有することで、参加者は深く理解することができました。

 

「許し合う」が生み出す奇跡

9月と10月の2回に分けて、今度は駅での賑わいづくりの秘密を探りました。日野駅再生のキーパーソンである西塚和彦さんをお招きし、「こうけん舎」という活動団体について学びました。行政も地域の人々も、最初は知らんぷりだった鉄道会社も、だんだん巻き込まれていきました。

鉄道の運転士が駅のカフェで弁当を注文すると、折り返してきた運転士にホームで弁当を手渡す「トレインスルー」と呼ばれるやり取りも生まれました。10月には4000人が集まるイベントを駅前で開催され、フィールドワーク参加者は企画から参加しました。

山田さんが強調したのは「許し合う」ことの大切さです。「あいつはダメだ」と言い出すと、バラバラになってしまいます。でもみんな、ゆるくやって、酒を飲んで、「さあみんな楽しくやろうぜ」という形で、いい雰囲気を作っている。この楽しさを味わってもらうことも目的でした。

日替わり店長は、生きがいを求める高齢者や自分のお店の開店を夢見る人や地元の商店の人や高校生など多様です。イベントは盛大で、最後は花火まで上がります。なんと皇族が来た時には、高校生が応接をしました。住民が保存活動をしてきた駅だからこそ、こうしたドラマが生まれたのです。

日野町のワークショップが示したのは、「体験」することの力です。乗ったことがないバスに乗ってみる。乗り遅れて、乗り間違えて、初めて利用者の気持ちが分かる。賑わいづくりの現場に立ち会うことで、人が巻き込まれていく様子を肌で感じる。そして「許し合う」ゆるさと楽しさが、持続可能な活動を支えているのだと感じました。


b.彦根フィールドワーク報告

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彦根エリアの報告は忠田季空氏、小杉菜々伽さんから。

「彦根の観光には大きな問題があります。彦根の観光90分問題です」。彦根市でコミュニティカフェを営む忠田氏は、そう切り出しました。彦根に来て、すぐ帰る。お金も使わない観光。彦根城だけ見て、「帰ろうか」となる観光です。しかも深刻なのは渋滞問題です。紅葉の時期や桜の時期には「えげつない渋滞」が起き、観光によって市民の生活が悪化しているといいます。

「もったいない観光。プラス、迷惑な観光」。忠田さんの言葉は率直でした。そこで彦根では「ゆっくりしてもらおうじゃないか」という発想のもと、2泊3日の滞在型周遊観光プランを作り上げようというミッションが始まりました。公共交通を使ってスポットの魅力を繋ぎ合わせ、人を育てることを目的に取り組みました。

 

シティプロモーション委員会と学生たちの挑戦

一緒に発表に立ったのは、彦根市シティプロモーション戦略推進委員会の小杉さんです。この委員会は、彦根のいいところを市民に発信する市民団体で、学生たちもスタッフとして参加していました。

フィールドワークは全3回、9月7日、21日、11月23日に行われました。1回目はインプットの回、2回目は実際にまちあるきをし、専門家にガイドをしてもらいました。それを元に観光パンフレットの試作を行い、3回目はもう一度まちあるきをしてブラッシュアップしました。

 

彦根観光の現実―7割が自家用車

小杉さんから示されたデータは衝撃的でした。宿泊と日帰りでは観光消費額に5倍以上の差があります。彦根の観光客は年間66万人ですが、秋と春に集中し、平日は閑散としています。そして最も注目すべきは来訪手段です。レンタカーを含めると、7割以上の人が自分の車で彦根に来ているのです。

さらに意外なのは、彦根城は滋賀県の観光ランキングで8位だということです。1位は黒壁スクエア(長浜)。「国宝、世界遺産登録頑張れって言ってるけど、彦根城が8位に甘んじている」という現状があります。

 

自家用車を使わない観光のパンフレット

試作した観光パンフレットには、明確なコンセプトがありました。2泊3日を前提とした滞在型観光プラン。基本的に自動車を使用せず、公共交通を活かすこと。市民の声を反映させ、他地域との差別化を図ることです。

パンフレットは持ち歩きやすい折りたたみ式で、特徴的なのは、あえてツアーの行き先、手段、時間を厳密に指定していないことです。「目的地を回って終わってしまうこともあるので、あえて『ここお勧めですよ』という形でお伝えしています。今まで行かなかった場所の魅力を知ってもらえたのではないか」と小杉さんは説明します。

日ごとに交通手段を分け、近江鉄道の1日パスなどを活用し、3日間で色々な交通手段を楽しんでもらえるようにしています。自家用車を使用しない動線を組んだことで、近江鉄道沿線の魅力が引き出されました。ひこね芹川の辺りや高宮町の町並み、豊郷町の旧校舎など、従来の彦根城観光では訪れなかった場所を巡れるようになっています。

今後はブラッシュアップをかけ、年内にPDF版を出す予定だといいます。

彦根のワークショップが示したのは、問題を直視し、具体的なアクションを起こすことの大切さでした。「90分観光」という課題に対して、学生と市民が一緒に汗をかき、実際に街を歩き、パンフレットという形にする。そのプロセスそのものが、人を育て、地域を変えていく力になるのだと感じました。

 

c. 草津フィールドワーク報告

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草津エリアは辻博子氏より報告がありました。草津市は新快速の停車駅が2つもあり、今年の住みよさランキングでは全国6位に選ばれた地域です。しかし、そんな「交通便利」な街でも、様々な課題が見えてきました。3回のフィールドワークでは、思いを出し合い、現場に行き、未来の街を考えました。

 

「外部経済」という視点の欠如

1回目、立命館大学理工学部教授の塩見康博さんから衝撃的な数字が示されました。移動時間の41%が渋滞による無駄時間。CO2排出量の15%は車から。全国には944万もの買い物難民がいる。車社会化で街の中心部が衰退し、公共交通も衰退する負のスパイラルが起こっています。

山田和昭さんからは、交通が変わって街が変わった事例が紹介されました。近くにあった駐車場を拝殿から離して作ったら神前町に賑わいが戻った出雲大社。街の中心部から車を締め出したら賑わったアムステルダム。

最も印象的だったのは日欧の考え方の違いです。欧米では社会資本への投資として公共交通に税金を投入し、投資した資金の5倍もの効果があるという考え方。しかし日本では赤字が問題になり、儲からないから投資できない。公共交通があることで地域が豊かになる「外部経済」は全く評価されていません。「日本の常識は世界では非常識なんだな」という言葉が参加者の胸に刺さりました。

ワークショップでは「バス路線が少なすぎる」「本数が減った」という声が圧倒的でした。交通便利な地域だと思っていた草津市でも、こんなに不満を持っている人々がいたのです。

 

3つのグループが見た現実

2回目は3グループに分かれました。1つ目は、まめバスや路線バスで遺跡を回りましたが、「日常生活するには不便。もっとバスの本数が増えるといい」という声が出ました。

2チーム目は、新交通システム導入が議論されている地域を訪問。立命館大学で賛成派と反対派に分かれてディベートを行いました。賛成派は「街の活性化、CO2削減、渋滞緩和に繋がる」、反対派は「コストがかかる」という主張です。でも実は全員が賛成派でした。外部経済を考えれば十分な効果があり、コストに見合うという気づきがありました。

3チーム目は自転車で街を巡りましたが、「車道が怖い」「どこを走っていいのかわからない」という声が出ました。輪の国びわ湖の藤本芳一会長から「世界では自転車は車道通行が当たり前。交通は弱者優先が原則」という話を聞き、ここでも「日本の常識は世界の非常識かも」と気づかされました。

 

熱い語りと未来への一歩

3回目、名古屋大学大学院環境学研究科 講師の松原光也さんの講演は熱いものでした。政府は道路予算に8兆円をかけているのに公共交通には新幹線を含めてもわずか2000億円と40倍の差。ガソリン補助金には6.2兆円を投じています。「この予算を公共交通に回していれば、1年間鉄道とバスをみんなが全国で無料に使えるのに」という話に、会場はざわめきました。

交通ライターの清水省吾さんからは福井の事例が紹介されました。京福電鉄が2度の事故で運行停止となり地域が大混乱。そこから市民運動が盛り上がり、市民と行政が連携して鉄道会社を設立した経緯があります。「市民運動は本当に大切」という学びがありました。

最後は上田洋平さんのワークショップ。「公共交通で実現できる自由は?」という問いに、移動の自由、時間の自由、思考の自由、交流の自由、生活の自由といった意見が出ました。それを実現するには、仲間を増やす、みんなに話す、待ち合わせは駅にする、バスの乗り方をわかりやすく示す、楽しいイベントを開く、とにかく利用する、交通税を払う。こうした意見が一般参加者から出ました。

草津フィールドワークを通して、これからも交通まちづくりに携わりたいという新しい市民が少なくとも5名見つかりました。「日本の常識は世界の非常識」という気づきが、未来への一歩を踏み出す原動力になったのです。

 

5.トークライブ1 「住み続けたいまちと交通をどうつくるか」

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トークライブ1は宇都宮浄人代表の進行で行われ、国土交通省都市環境課 課長補佐の今 佐和子さん、滋賀県土木交通部交通戦略課 参事の福島森さん、滋賀地域交通ワークショップファシリテータでやさしい交通しが副代表の南村多津恵さん、楠田悦子さん、佐々木和之さんが登壇されました。



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まず国土交通省都市環境課 課長補佐の今 佐和子さんからお話がありました。今さんは栃木県で暮らしており、栃木県は信号のない横断歩道で車が止まってくれない率がワースト1位。車社会で交通マナーが悪い地域だといいます。住んでいる小山駅前のメインストリートでさえ、子どもたちが歩く路地を車がすごいスピードで走り抜けます。

「こういう子供たちが歩く道くらいは歩行者優先であってほしい」。今さんはまちなかの道を車中心ではなく人中心の空間にしたいという思いで、国土交通省で仕事をしています。

今さんが影響を受けたのはフランスです。パリでは元々高速道路だった場所が、今では公園になっています。ニューヨークのタイムズスクエアも、車優先の交差点から人が集う広場に変わりました。「200人の人が車に乗ると177台必要ですが、バスなら3台で済む。車は空間を使いすぎる」と指摘します。

現在は都市環境課で、環境に良いまちづくりと暮らしやすいまちづくりが両立できることを伝える仕事をしています。時短勤務と2回の育休を取得し、時間に余裕を持って地域に関わることを大切にしています。

駅前広場でマルシェを開催したり、古い公園でキャンプをしたり、空き地でプールパーティを開いたり。毎週水曜日に広場の桜の木の下でお昼ご飯を食べ、SNSで「一緒に来てください」と呼びかけて仲間を探しました。そうして出会った人たちが、広場を使ってイベントを開き、まちが盛り上がってきています。

今さんは「車なし子育て」を実践し、ブログで発信しています。かつてはバスにベビーカーで乗ろうとすると乗車拒否されることもありました。「人権がないくらいのような感じでした」。しかし地道に続けていたら仲間ができ、バスも便利になり、運転手さんも親切になってきました。

「フランスに行くとバスが便利なだけじゃなくて、バスに乗る場所がとても居心地がいい。公共交通を便利にしていくことは、空間を良くしていくという側面からも攻めていけるんじゃないか」。バス停や駅前広場をみんなが集いやすい場所にしていきたいと、今さんは語りました。



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次に滋賀県土木交通部交通戦略課 参事の福島森さんが、県が策定中の地域公共交通計画について報告しました。令和5年度にまず「滋賀地域交通ビジョン」を作成。滋賀県は車社会であることを認めつつも、自家用車を使えない人や使えないときでも移動ができる、そして自家用車を使わないという選択ができる県を目指すとしました。

2040年代にはコンパクトアンドネットワークで、公共交通で拠点をつないだ都市構造を作るというビジョンです。これを実現するため、県民とのワークショップやフォーラムを重ねてきました。

県は滋賀県を3つの地域に分けて考えています。都市部は公共交通主体で移動できる暮らし、郊外地域も公共交通等で移動できる暮らし、中山間地域はその地域の状況に即した手段で移動できる暮らしを目指します。

将来デザインの軸となるのは鉄道とバス路線です。「最低限30分に1本くらいないと、移動の選択肢になり得ない」という意見が多かったため、30分に1本のサービスレベルを確保する考え方を採用しました。

今後5年間の政策として、4つの実施方針を立てています。1つ目は情報発信。「今ある地域交通を知らない、乗り方がわからないという方が結構いる」からです。2つ目は現在のサービスレベルの維持。3つ目は地域交通の充実。4つ目はDX、GXの取り組みです。

そして最も注目すべきは財源の問題です。2030年の時点で必要な概算額は112.8億円。維持のためだけでも約60億円、さらに良くしていくための投資には53億円程度が必要です。運行コストの削減、運賃収入の増、既存予算の組み替え、国庫補助金の活用だけでは全てをまかなうことは困難で、新たな財源を含めた検討が必要だと福島さんは説明しました。

その財源として「広く負担を分かち合うことが可能で、安定的に確保できる税が選択肢に入るのではないか」と提案。ただし「交通税」ではなく、「みんなの移動を支え、暮らしを豊かにする新たな税」(新たな税)という名前を考えているといいます。「交通事業者を守りたいんじゃなくて、それによって滋賀の暮らしを良くしていきたい」という思いからです。

福島さんは強調しました。「計画の策定をもって税の導入の是非を決定するものではありません。ただ、充実していこうと思っている部分があるので、その為に必要な費用を賄う手段として、税というのもあるんじゃないかということを皆さんに投げかけて一緒に考えていきたい」。

12月13日には草津市のイオンシネマで地域交通フォーラムを開催し、県民との対話を続けていくとのことでした。



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さらに滋賀地域交通ワークショップファシリテータで、やさしい交通しが副代表の南村多津恵さんからお話がありました。南村さんは、「このフォーラムをやろうと言い出した最初の人間が私です」と語り始めました。南村さんは2006年に滋賀へ移り、環境と交通を結ぶ交流会の企画や、自転車を軸にしたまちづくりに携わってきました。本フォーラムに至るきっかけは、2023年に滋賀県が開催した県民フォーラムに参加して感じた強い違和感でした。参加者と発信側の意思疎通が成り立たず、多くの人が不完全燃焼のまま帰った様子を見て、「このままではいけない」と感じたといいます。県庁にももう少しうまくやりたいという想いがあり、住民行政連繋の専門家である佐々木さんに声がかかり、そこからやさしい交通しがの戸田浩司さんを誘ってチームをつくり、ワークショップのファシリテータを3人で務めました。

しかし、ワークショップを重ねる中で「交通とまちづくりの正しい情報が市民に届いていない」と痛感しました。参加者からは「公共交通の維持は無理」「ライドシェアがあれば十分」などの声が出ていたためでした。南村さんは、誤解をなくし正しい判断につなげるには情報が必要だと考え、今回のフォーラムをやさしい交通しがの仲間と開催しました。

さらに南村さんは、未来への「負債」について強調しました。滋賀県のCO2排出量の約2割は自動車由来であり、対策を怠れば滋賀の気温は4.4度上昇すると予測されています。公共交通が衰退すれば、地価や税収、福祉サービスにも影響が出て地域は弱ると指摘しました。「未来に負債を残さない交通まちづくりを進めたい」と呼びかける言葉に、会場は大きな拍手に包まれました。



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楠田さんはお話を聞いて「すごい熱量を感じる」と感想を述べ、「南村さんが話されていた『やり続けることの大切さ』に共感しました」と話されました。

佐々木さんからは「ワークショップを振り返ると、参加者が感じていた負担への不安は無視できないものだと改めて感じました。負担が妥当かどうか、説明が十分かどうかという疑問は自然なもので、どれも大切な指摘でした。税金の使い方を含め、もし負担が発生するのであれば、その理由や効果を丁寧に示す必要があります。あの場で出た疑問や『おかしいのでは』という声をしっかり受け止めながら、今後の取り組みを進めていきたいと思っています」とお話があり、トークライブ1は終了しました。

 

6.トークライブ2「まちづくりと交通の広場しがからの提案を受けて」

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トークライブ2では山田和昭氏と名古屋大学大学院環境学研究科 講師の松原光也氏より、「まちづくりと交通の広場しが」からの提案と題してお話がありました。

お二人が軸にしたのは、「移動の不便さが放置され、負担が個人や社会にのしかかっている」という現状認識です。渋滞、移動貧困、人手不足──。これらは個々の問題に見えて、実際には地域全体の活力を奪う大きな課題です。だからこそ、公共交通を「残す」のではなく、「活かす」視点で未来を考える必要があると強調しました。


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目指すのは「移動で我慢をしなくていい社会」

提案のビジョンとして掲げられたのは、「不便を我慢しなくていい移動環境をつくる」ことです。行きたい場所に行けない、時間を削らないと移動できない──そんな状況を改善し、子どもや高齢者、障がいのある人など、誰もが自由に動ける社会を目指すと説明しました。

公共交通を単なる“赤字対策”として扱うのではなく、社会・環境・経済のすべてに良い影響を与える“投資領域”として位置づけ直すべきだというのが、お二人の大きなメッセージです。

環境面の転換点となる「スコープ3*」の視点

今回の提言で特に注目されたのが、CO₂排出の算定基準「スコープ3」の重要性です。日本ではバス会社など交通事業者だけの排出量が重視されがちですが、本来見るべきは“移動全体”での排出量です。たとえば、車40台分の移動がバス1台に置き換わるだけで、地域の排出は大幅に減ります。

欧州ではスコープ3が主流であり、滋賀県のように環境への意識が高い地域こそ、この視点を早期に取り入れるべきだと訴えました。

*スコープ3(Scope3):気候変動問題への対策のため、温室効果ガス(GHG)の排出量を算定、報告するために定められた国際的な基準「GHGプロトコル」で示されている考え方によるもの。

Scope1は「事業者が直接排出するGHG」、Scope2は「事業者が間接排出するGHG」を指すのに対し、Scope3は、それ以外の事業者の活動に関連する他の主体のGHGの排出量を指す。つまり、原材料の製造と仕入れや販売後に排出されるGHGも、当該事業所の排出とみなす考え方であり、モノやサービスの生産や販売に必要な従業員の通勤や出張を通じて排出されるGHGがScope3に含まれる。


行政コストを左右する「スプロール化」の問題

提言では、人口や住宅が郊外に広がるスプロール化が行政コストを押し上げている現状も指摘しました。道路補修や上下水道の維持、ごみ収集や除雪など、街が広がれば広がるほど費用は増え続けます。

そのため、公共交通を軸に生活を駅・バス停周辺へ集める「コンパクトなまちづくり」が不可欠だとしています。しかし現状では、最も便利な駅前が市街化調整区域となり開発できないなど、公共交通と都市計画がうまく連携していない例もあると問題提起がありました。

「地域みんなで公共交通を育てる」という発想

今回のトークでは、行政や交通事業者に任せるだけでなく、市民が主体的に関わることの重要性も語られました。実際に使ってみる、不便を“我慢”で終わらせず意見として伝える、家族や友人と課題を共有するなど、一人ひとりができる行動は多くあります。

また、松原さんは地方行政に求めることとして、「ビジョンや計画を作ったら終わりではなく、今後の政策の実施段階でも市民が関わり続けるための人材育成と仕組みづくりをすすめていただきたい、また情報交換できるプラットフォームが必要、県だけでなく国も市町もきちんと計画と立てて進めていくのを、滋賀県がリードしてすすめていただきたい」と呼びかけました。

まちに“楽しさ”を取り戻すことも重要

さらに、中心市街地で過ごす時間が減り、車で移動する郊外型ショッピングが中心になっている現状にも課題が示されました。公共交通で気軽に行ける「楽しい場」を街の中心に増やすことで、人の流れとまちの活気を取り戻していく必要があるとしています。

移動を「自分ごと」にして地域の未来を考える

提言の最後には、「この提案を、自分が住む地域で説明できるか」という問いが投げかけられました。交通の問題は、生活・環境・行政コスト・経済など、地域のあらゆる課題とつながっています。移動を自分ごととして考え、声を届け、使いながら支えていく──。その積み重ねが、未来のまちをつくっていくのだと感じさせる内容でした。



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その後にはトークライブ1の登壇者と共に意見交換が行われました。

「提案に強い説得力があり、地域に持ち帰って説明したくなる内容だった」と前向きな声がありました。特に、スコープ3でのCO₂排出量の見える化が義務化される2027年に向け、公共交通を企業連携のチャンスとして生かすべきという指摘が印象的でした。また、行政はクレームを受けやすい立場だからこそ、「感謝や称賛の声」が職員のモチベーションを高め、市民側からできる重要なアクションになるという意見も出ました。

さらに、公共交通を軸に、中心市街地でのイベントなど“人が集まる仕掛け”を増やすことが地域変革の一歩になるという提案も共有されました。一方で、人口の多寡によって課題が異なる点にも触れられ、病院・教育・買い物など、生活サービスと移動手段をセットで設計する必要性が強調されました。

全体として、交通単体の議論ではなく、「誰が困っているのか」を特定し、分野横断でまちづくりと統合して考えるべきという共通認識が深まりました。



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参加者との質疑応答も行われました。

ある参加者は、「バスは運転手さんによっては怖くて乗れないという声もある。高齢者や子どもなど、慣れていない人が安心して乗れる環境を整えるべきだ」と話しました。特に、交通系ICやQRコード決済などの導入は早急に進めるべきだと強調されました。

また、学校の登下校に関する話題では、「登下校バスの確保が難しく、部活動に影響する」という議論がある一方で、「小学校と中学校の垂直統合により送迎コストを抑えられるのでは」という提案が出されました。中学校では混成チームでの活動など、柔軟な工夫もできるのではないかと、前向きな視点も示されました。

続いて、駅前の空洞化への懸念も共有されました。駅周辺は地価が高く、それに伴い賃料も上昇します。その結果、テナントの撤退が相次ぎ、空きフロアが広がっているとの指摘がありました。実際に、駅前のビルでは「入居者募集」の札が目立ち、地元の商店が経営を続けにくい状況が生まれています。

一方、少し離れた場所では賃料が下がり、チャレンジしやすい環境が生まれやすいという話もありました。そうしたエリアを起点に新しい店が増え、まちが再び活気づく事例は全国に見られます。「彦根はまだ“元気すぎて”、この再生サイクルに入れていないのでは」という興味深い意見もありました。

健康と公共交通の関わりについての声も印象的でした。ある参加者は、膝の痛みをきっかけに自転車利用を始めた経験から、「歩く・座る・こぐといった動作を日常にバランスよく取り入れることが、高齢期の mobility(移動の自由)を守る」と話しました。公共交通を使いながら、健康づくりの視点を市民に届ける必要性が述べられました。

さらに、学生からの提案もありました。まちづくりや公共交通に関心のある学生が活動しやすいよう、関係機関は情報提供をより積極的に行うべきだという意見です。学生は体力も時間もあると見られがちですが、ノウハウ不足で遠回りしてしまうことも多いとのこと。学生と行政・専門家の協働が、より実効性のある取り組みにつながると語られました。

これらの意見を通じて、「負担や不便さへの疑問は、真っ当な声として受け止め、丁寧に応えていく必要がある」という共通認識が浮かび上がりました。公共交通の改善、まちづくり、健康、そして若い世代の参画――。それぞれの視点がつながり、市全体の未来を考えるきっかけとなる場になったといえます。

 

7.ワークショップ「暮らしたい未来のまちを考えてみよう」

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プログラムの終盤にはワークショップがありました。滋賀県立大学地域共生センター特任講師の上田洋平氏の進行で、交通を通して暮らしたい未来のまちについて近くの参加者とディスカッションしました。



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最後には、思い描く暮らしを実現するために、市民や行政、事業者などは何ができるかをグループごとに短冊にまとめて、みんなの前で発表し、その内容をみんなで唱和するというユニークな取り組みが行われました。各グループ個性豊かな発表内容で、唱和することで色んな意見を実感することができました。

 

8.まちづくりと交通の広場しがのみんなで目指すもの

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最後に閉会にあたり、宇都宮代表から、今日一日の議論を踏まえた温かいメッセージが届けられました。富山の風景を映したスライドを示しながら、「課題を見つけ、ワクワクしながら行動することが、自分の元気にも地域の元気にもつながる」と語りました。愛や希望を持って取り組む大切さ、人づくりは地道で時間がかかるが、仲間とともに続ければ地域は必ず良くなるという思いを強調しました。



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今回のフォーラムでもグラフィックレコーディングがありました。今回担当されたのは三宅正太さん。とても分かりやすく内容がまとめられていて、絵や図も生き生きとしていて楽しく、写真に収めている参加者も多く見られました。

 

最後に

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今回のフォーラムを通して見えてきたのは、「交通の課題=交通だけの問題ではない」ということでした。子育て、教育、医療、買い物、そして地域の暮らし方そのものが、移動と深く結びついています。移動しやすいことは、誰もが安心して暮らせるまちの条件であり、加えて地域の魅力や活力を生み出す基盤でもあります。

登壇者の言葉に何度も登場したのは、行政や専門家だけに任せるのではなく、「自分たちでつくる」という姿勢でした。送迎を少し変えてみる、自転車や公共交通を活用してみる、近くの人を手助けする。そんな小さな行動の積み重ねが、将来のまちのあり方を確かに変えていきます。

4カ月にわたって開催された本フォーラムはひと区切りを迎えましたが、議論はここで終わりではありません。むしろ、ここからがスタートです。地域ごとに状況は違っても、「ずっと住みたいまちをつくりたい」という思いは共通しています。その思いを形にしていくために、これからも対話と試行錯誤が続いていきます。

滋賀の交通の未来は、私たち一人ひとりの選択と行動の延長線上にあります。今日の学びや

気づきが、次の一歩につながることを願っています。

 (エシカルライター Sari)


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