フォーラム「あなたのまちは20年後もくらしやすいですか?」を開催しました
フランスの地方都市には、なぜ「シャッター通り」が少ないの?

交通から考える、20年後もくらしやすいまち
「あなたのまちは、20年後もくらしやすいですか?」
そう聞かれると、ちょっと考えてしまいませんか? いまは車でスーパーにも病院にも行けます。でも20年後、自分や家族が運転できなくなったら? 子どもの通学や親の通院に、毎日送迎が必要になったら?
実はこれ、「交通」の問題だけではなく、「暮らし」の問題です。10月23日、大津市で開催した「まちづくりと交通の広場しが2026」。テーマは、なんとも気になる「フランスの地方都市にはなぜシャッター通りがないのか」でした。
滋賀は便利になった。でも、駅前から人が消えた

滋賀県は、鉄道によって発展してきた地域です。新快速が草津、彦根、長浜へと延び、京都・大阪へのアクセスが良くなるにつれて、大津や草津にはマンションが増えました。草津市の人口は1970年と比べ約3倍になっています。
ところが一方で、クルマ社会が進みました。住宅だけでなく、スーパー、病院、飲食店なども幹線道路沿いへ。ショッピングセンターの「駐車場が広くて便利」になった半面、駅前へ行く用事がなくなりました。人が来ないと店が閉じる。店がないから、さらに人が来ない。バスや鉄道の利用者も減る。つまり、シャッター街と公共交通の衰退は、つながっていたのです。
フランスだって、昔はクルマ社会だった
では、フランスはどうなのでしょう。都市政策研究家のヴァンソン藤井由実さんによると、フランスも1980年代まではモータリゼーションが進み、中心街の広場は駐車場になり、歩行者と賑わいは消え、滋賀と似たような悩みを抱えていました。

しかし、そこから約30年をかけて、まちのつくりを変えてきました。まちの規模に応じてLRTやBRT、バスを整備。中心街では車の進入を抑え、道路を歩行者や自転車にゆったりと開放。カフェのテラスやベンチを置き、通過する場所ではなく「いたくなる場所」をつくりました。また、高齢者や買い物客のためには、小型の無料電気バスなども走らせます。車を追い出して「あとは歩いてください」ではないところがポイントです。こうしてまちの賑わいと魅力、そして豊かな暮らしを取り戻したのです。
シャッター街対策は「商店街だけ」に任せない

さらに驚いたのは、商業政策です。日本では商店街が寂しくなると、イベントや商品券などで「商店街を元気にしよう」と考えがちです。ところがフランスでは、郊外への大型商業施設の立地を都市計画の中でコントロールします。空き店舗や空き家を長期間放置すると税負担が重くなる仕組みもあり、物件を次の人へ渡しやすくする。中心街へ人が来られる公共交通を整える。歩きたくなる空間をつくる。つまり、交通、商業、税制、都市計画をバラバラに考えていないのです。
「シャッター街をなくしたいなら、商店街だけを見ていてはいけない」。これは日本の地方都市にも大きなヒントではないでしょうか。
公共交通は「誰が乗るか」だけでは測れない
もう一つ、印象に残ったのがお金の考え方です。日本では鉄道やバスについて、「何人乗っているの?」「赤字はいくら?」という話になりがちです。フランスでは公共交通を、車を運転できない人も社会に参加してもらえ誰も取り残さない「社会的包摂」の基盤として考えます。
そのため運賃収入だけに頼らず、一定規模以上の企業が負担する「モビリティ納付金」などで支えています。公共交通があれば、社員は通勤できる。学生は学校へ行ける。高齢者も買い物に出られる。そして中心街に人が集まり、お金も動く。交通は鉄道会社やバス会社だけの問題ではなく、地域全体を支えるインフラだという発想です。

女性が政策を決めると「移動」の見え方も変わる
個人的に興味深かったのは、政策をつくる人たちの姿でした。フランスの地方議会では女性議員の割合が高く、自治体職員にも多くの女性がいます。交通や都市計画の職員は数年ごとに別部署へ異動するのではなく、専門家として経験を積み重ねます。
子どもの送迎、毎日の買い物、親の通院。家庭では、誰かの「移動」を支えることが意外なほど大きな負担になっています。だから公共交通が便利になることは、「バスに乗る人」のためだけではありません。「送っていかなければならない人」を減らすことでもあります。交通政策は、実はとても身近な生活政策なのだと気づかされました。
20年後も、このまちに住みたいですか?
滋賀でも変化は始まっています。近江鉄道は2024年から自治体が施設や線路を保有する上下分離方式へ移りました。滋賀県も地域交通を維持するだけでなく、暮らしの質を高めるために充実させようとしています。
では、私たちはどんなまちを残したいのでしょう。駅の近くに何があれば便利なのか。病院やスーパーはどこにあるべきなのか。車を運転できない人はどう移動するのか。そして20年後、自分が免許を返納したとき、一人で買い物に行き、病院へ行き、友人とお茶を飲みに出かけられるでしょうか。
公共交通を守るというと、「赤字の鉄道やバスを助ける話」に聞こえます。でも、本当に守りたいのは鉄道やバスではなく、私たちの暮らしです。

ほしいのは、車を運転しなくなっても、安心してくらし続けられるまち
「あなたのまちは、20年後もくらしやすいですか?」交通のことを考える入り口は、このくらい身近でいいのかもしれません。
(やさしい交通しが 山田和昭)
今回の参加者はこんな顔ぶれでした。

一緒に交通まちづくりを進める仲間とネットワークをつくりたいと思っています。
ご関心のある方、わたしのまちをもっとくらしやすくしたい方、ぜひお仲間に加わってください。ご連絡はこちらのリンクから。
フォーラムの内容を絵図で振り返ってみよう

グラフィッカーの永阪佳世さんに、会の内容をグラフィックレコーディングで記録してもらいました。






さて、お約束の参加者限りで公開する資料はこちらからどうぞ → ダウンロード
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ご不明の方はやさしい交通しが事務局までお問い合わせください。



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