日野フィールドワーク2回目、駅の持つ可能性にワクワク
- yasashiikotsushiga
- 9月15日
- 読了時間: 9分

まちと交通の未来づくりフォーラム、日野フィールドワークの2回目「駅起点のまちづくりのすすめかた」を9月11日(木)に日野駅舎のコミュニティスペースなないろにて開催しました。
8月21日の1回目は町会議員の皆さんに日野町の公共交通の現状を体験いただくのが主な目的でしたが、今回と次回はなないろや駅を使ったまちづくりに関心のある方が対象です。関係者を含めて13人が集まりました。
日野駅舎は9年前に、老朽化によって取り壊され、簡易な屋根だけにする計画がありました。それを地域の人たちが保存運動をし、募金を集めて、今のような住民が集まる駅舎に再生されました。
(詳細は以前の記事の中盤を参照 → こちら)
その日野駅の過去、現在、未来についてみんなで考えました。
●講義「駅を中心にしたにぎわいづくり」
最初のプログラムは、やさしい交通しがの山田和昭から話題提供しました。

昔は駅を中心にまちづくりが行われていて、駅の近くに商業地や住宅街が集まり、駅前がにぎわっていました。それがクルマ社会に変わり、にぎわっていた商店街がシャッター街になりました。アメリカでは1961年にクルマ社会の見直しが始まり、公共交通を中心としたまちづくりに戻ってきています。では滋賀ではこれからどうすべきでしょう?
駅は開設以来、多くの人をつなげ、歴史を重ねてきた場です。2022年の近江鉄道無料デイでのガチャフェスは、沿線の各地で同時多発でイベントをやろうと呼びかけたものでした。線路でつながっている駅をまたいで広い範囲でにぎわいづくりを試したのです。
他の地域の例として、なないろのお手本になった福井県えちぜん鉄道の勝山駅、同じく田原町駅、土佐くろしお鉄道の中村駅、JR東日本の弘前駅を紹介しました。
これらの駅では、今までは通り過ぎるだけだった場所が、駅の中ににぎわいの機能や高校生の居場所機能、コミュニティが生まれる機能を持たせたことで、住民に愛され、人が集まる場になり、公共交通の利用者も増えています。
●講義「日野駅の再生、なないろ誕生から現在まで」
次に、なないろの運営を行っている一般社団法人こうけん舎の代表理事、西塚和彦さんから、壊されそうになった日野駅がどう再生されて今に至るのか、5周年記念のビデオを見ながら紹介がありました。

日野駅ができたのは大正5年(1916年)頃。駅舎は最終電車の運転士が寝起きする役務室でした。電車の切り替え作業が八日市駅で集中管理できるようになり仮眠を取る場所も別に確保されたことから、老朽化した駅舎は取り壊してカーポートのような屋根だけの駅にするという計画が持ち上がります。そこで行政と学識経験者、地元住民が駅舎再生懇話会を立ち上げ、残せる部材を残して駅を再生する方針が決まり、民間から約8560万円の寄付が集まりました。
ただ建物を再生するだけでは仕方がないので、日野の唯一の玄関口として観光案内所をつくり、電車待ちのためのカフェ機能を持たせることになりました。しかし日野駅の乗降者数は一日500人弱で、ほぼ中高生が占めているため、カフェを開いても3カ月も保ちません。そこで、やりたい人がやりたいときにやる日替わり店長方式のカフェが考案されました。こうけん舎は施設管理とお店のコーディネートを行っています。ここで日替わり店長にチャレンジした中から三つの店舗がこれまでに独立して開業されました。また、日野高校が授業で行っているカフェは6世代目となり、メディアに何度も採り上げられています。

続いて、「こばしやカフェ」を運営されている日替わり店主の小澤豊さん(こうけん舎メンバー)から、日替わりカフェの実態とやってみた感触についてお話しいただきました。
2017年から2025年までに予定も含めて101店舗による2686回のカフェがなないろで開かれました。稼働率は92%を誇ります。
なないろの日替わり店長の人気の秘密は、店の使用料が安いこと、備品が揃っていて手ぶらで来ても営業ができること、社長気分が味わえることなど。ここで営業すると、大もうけはしないけれど損はしません。
当初はチャレンジショップの位置づけで始まりましたが、現在はプラスして、定年後の世代の生きがいの場にもなっています。現在の店主さんの平均年齢は65歳ぐらいだそう。お金と時間と心に余裕がある人が日野駅の玄関口でおもてなしをして、好循環が生まれています。
一番人気の「なにわや」さんは8年間で700回以上の開店をされています。ここではドライブスルーならぬ、日本初のトレインスルーが行われているとのこと。近江鉄道の貴生川行き列車の運転士が行きに注文していき、日野駅に戻ってきたときにホームでお弁当を三つ四つともらって行くのだそうです。
また、夜遅くに駅を利用する高校生を思いやって、「シュガーヒル」さんは夜にライブを開催してくれているのだとか。電車から降りた子に歌手がお帰りと声をかけ、夜遅く帰った子が安心して親の迎えを待てるように気遣ってくれていると。
コミュニティが生きている駅ならではのお話を聞くことができました。
●グループトーク「私ならこの駅はこう使う!」
休憩の後は「ここは待合室なので出入りは自由、締め切らない」という制約があることを前提に、なないろをどう使いたいかについて参加者みんなでアイディアを出し合いました。
いろいろな背景を持つ世代の違う13人で話せば、出るわ出るわ。

1.まちの魅力発見
・日野一周サイクリング(起点)
・駅前からの町内自転車散歩
2.相談会
・JOBカフェ(業界カフェ)
・進路相談会
・運転免許相談会
・古民家開業の相談会、古民家活用カフェ
・町役場カフェ、議員カフェ(町政なんでも相談)
3.コミュニティ
・まちのことをみんなで語るおしゃべり会
・こども食堂+老人食堂
・カラオケ
・コンサートやリサイタル、ライブ会場
・映画観賞
・甲子園パブリックビューイング
・地物の直売所
・お米の直売所
4.高校生向け
・高校生の思い出づくり
・誕生日会
・高校生対象100円商売(早朝おにぎり販売、唐揚げ、コロッケ、クッキー)
・カフェは高校生料金を作る
・高校生からアイデア募集(ふせんで希望を貼れる場、七夕企画など)
5.教室
・パソコン教室
・お年寄りの体操教室
・コーヒー教室
・日の菜漬け体験教室
6.食育
・日野菜漬けコンテスト
・魚の解体、さばいて食べる会
・町内の鯛そうめんを食べ比べ
・他の駅を巻き込んで地域の食を食べ比べ
7.日替わりカフェ
・地物レストラン
・ジビエレストラン(地域の獣害を学ぶ)
8.展示
・わが家のお宝紹介(なんでもお宝鑑定団)
・駅文庫(お持ち帰り、引き取り自由の図書館)
・鉄道ジオラマ展示
9.イベント
・将棋、ボードゲーム、キャッチボール、そろばん大会
・縁日(昔あそび)
・カーゴバイクレース
10.その他
・市役所の端末機の設置

「南阿蘇鉄道の長陽駅が理想やねん」と西塚さん。いろいろな人が自分の居場所として駅を自由に使って楽しむ、自分ちの軒先や縁側のような駅。
見せていただいたビデオの中では、なないろに集った様々な年代のたくさんの人たちが「なないろ大好きー!」と言っていて、いやもう十分なんじゃないかと思わされました。
「やりたいことは、こうけん舎が役所と相談して、何とかやれるようにする。みんなはやりたいことを提案して」とのことで、みんなわくわくをかき立てられたようでした。
●みんなの感想
最後に参加者の皆さんから一言ずついただきました。
・いいなぁ、日野。ここの住民になりたいなぁ。
・日野町についてもっと知りたいと思いました。
・日野はユーモアある人が多くて楽しそう。
・巻き込み力がすごい! ゆるく楽しくしたたかに。
・自分が高校生の時と比べ日野駅は大きく変わったと感じました。
・若者の積極的な利用が増えるとよいと思いました。
・交通に関する困り事を聞く場ができるといいな。
・地域の力、アイデア次第でなんでもできる。
・スモールスタート、起業の起点に。
・いろんな世代で意見交換ができたのがよかった。
・ながかったけどたのしかった。
・楽しく広がる輪。
・あー楽しかった。腹減った。
いろんな人が集まって話ができたことでアイディアがふくらみ、皆さんに楽しかったと思っていただくことができました。
●次回のフィールドワーク3回目はガチャフェス
日野フィールドワークの最終回は、10月12日(日)、近江鉄道にぎわいづくりDAYガチャフェスに合わせて、日野駅前ではイベント「日野が好き」が11時から19時過ぎまで開催されます。
日野のよさを町外の人に知っていただき、町内の人には再認識していただくための企画です。駅前にはたくさんの模擬店が出ます。
・日野商人には醸造業を行う人が多かったことから、日野にルーツを持つ15蔵のお酒を集めました。日野高校と連携し、三雲養護学校にぐい飲み100個を発注、1500円で買ってもらったら4枚綴りのチケットで日野ルーツの地酒が飲める。
・16時から恒例の松茸抽選会。
・夜はライブ。最後の一曲は、近江鉄道の米原行きと貴生川行きの列車が発車する20時8分頃のタイミングに合わせ、西側の50m先に打ち上げ花火。
このフィールドワークとしては、イベントの運営をお手伝いします。地酒コーナーに張り付いて、日野の人とおしゃべりするとか。100円クーポンを配るとか。
早く来られる人は7時から会場設営は始まりますのでテント立てなど。
終了後は日野の皆さんと直会(なおらい、打ち上げ)でたくさん喋ります。
日野駅がすてきな駅である秘訣を、現場で日野の人たちと一日中ふれあう中で、体で学びましょう。日野に関心のある方だけでなく、新しい場を作ってみたい人にもきっと参考になるはずです。
スタッフ特典もあるので、ぜひお越しください。お待ちしています。

<おまけ>
この日は日替わりカフェはお休みでしたが、彦根のコミュニティカフェOn Your Markが出張して、ケニアのスペシャリティコーヒーを出してくれました。
また、終了後の懇親会もOn Your Mark店主が腕を振るった6品をおつまみに、ワイワイと親交を深めました。
平日の開催だったため、昼間は参加できなかった人が夜から顔を出してくれました。日野の活動の盛り上がりはこの夜の一杯飲みに秘訣がある、という人もいます。10月12日はきっともっと盛り上がるんだろうなあ。
(やさしい交通しが 南村多津恵)

中日新聞が記事にしてくださいました。ありがとうございます。

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