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おとなの社会見学! 近江鉄道沿線を電車でめぐってつながるMLGs交流ワークショップを開催しました

  • yasashiikotsushiga
  • 7月15日
  • 読了時間: 10分

更新日:7月23日


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 7月13日(日)、近江鉄道線を活かしたまちづくりフォーラム「沿線を電車でめぐってつながるMLGs交流ワークショップ」を開催しました。

 私たちやさしい交通しがとマザーレイクゴールズ推進委員会との共催イベントです。今回は、滋賀県内だけでなく福井・富山・愛知からも市民団体・学生・学識者ら合わせて27人の参加がありました。


 1月26日に開催した「『100% 近江産デニム』は可能か? −綿花揺れるガチャコン沿線のものがたりを思い描く」に続く、コミュニティ・モバイル・カレッジの第2回でもあります。また、近江鉄道沿線の交流会は2月11日のまちのわ会議「事例から考える近江鉄道沿線のこれから」に続いて2回目です。


●彦根のまちの変遷を解説

駅自由通路から彦根の変遷を10分解説
駅自由通路から彦根の変遷を10分解説

 JR彦根駅改札前で受付後、駅の自由通路を移動して、彦根の交通と街の変化について解説を行いました。案内人は、前職では近江鉄道株式会社の鉄道部部長を務めた本会メンバーの山田和昭です。

 駅北側では石田三成が居城した佐和山と井伊家支配への移り変わり、駅東側はセメント工場跡地に自動車都市型の商業施設ができたことで商業の中心が移って渋滞が激しくなり中心街の衰退が起き、その後バイパスが開通して今後の交通や商業の動静が注目されること。近江鉄道駅待合室が彦根東高校により彩られていること。そして西口は幕府筆頭家老であった井伊家により東西の要衝とされ、ここが滋賀の中心地であったこと。北陸と近畿に店舗網を広げる平和堂のアルプラザ彦根が、かつて屋上遊園地も有し、平和堂大躍進の一歩となりました。往時の彦根経済は旺盛だったのですが、自動車都市化により旧市街が衰退し、彦根城まで続くメインの通りが飲食店中心となりテナントが住宅街地になり、南側への商店街がシャッター街となっている様子など、交通の変化が街を変えていることをコンパクトに解説しました。


彦根駅から銀座商店街までバス移動
彦根駅から銀座商店街までバス移動

 彦根駅からはバスに乗り、5分で銀座商店街に移動しました。車内からはシャッター街と化した旧市街地の商店街の様子が観察できました。乗車するのは「駅チカ100円区間」だと思っていたら、一つ前のバス停でいきなり250円に上がり、がっかり。バス乗り場での案内サインにはいろいろと問題があることもわかりました。


●彦根銀座商店街のまちづくり活動

学生の設計・施工でリノベされたOn Your Mark 2号店と店主の忠田季空
学生の設計・施工でリノベされたOn Your Mark 2号店と店主の忠田季空

 平和堂1号店前にあるバス停から、コミュニティカフェ店主の忠田季空(本会メンバー)より銀座商店街の現状やまちづくり活動を紹介いただきました。

 普段は入れない小島ビルの中を見学。かつては結婚式、バレエのレッスン、ピアノ教室など豊かな文化が花ひらいた舞台でもありました。屋上も特別に見学させていただき、彦根城・びわ湖が一望できる眺望も楽しめました。この商店街も自動車都市化によりシャッター化が顕著で、国道沿いの温浴施設ができ銭湯が壊滅したといったお話も出ましたが、滋賀銀行だった建物を滋賀大学と電通とトヨタのコラボで活用したり、えびす講、サマーフェスなどさまざまな活動が行われていることが紹介されました。


●銀座商店街の貴重な建造物

濱崎先生による彦根銀座商店街の防火建築の解説
濱崎先生による彦根銀座商店街の防火建築の解説

 滋賀県立大学 濱崎一志元教授 から銀座商店街の防災建築が江戸時代の町家の地割りをそのまま踏襲した、とても複雑な鉄筋コンクリート造りになっていることなどを解説いただきました。かつては画期的な防火建築で、店舗兼住宅は食住接近なので夜間人口も減らず活気ある街だったそうです。現在は自動車都市化などにより人通りが減り、建物の老朽化、耐震化など課題が多く活用の方向性が探られています。

 お話を聞かせてもらった会場は、その建物の一角を地元学生が設計、施工したコミュニティカフェ On Your Mark(2号店) です。高島市・針江の湧水で淹れたスペシャルティコーヒーをいただきながらの講義でした。また、観光では観光客の滞在が短い「90分問題」が提起され、観光客がこの地域を回遊する仕組みづくりの必要性が解説されました。


参加者の声

・彦根城以外にも豊富にある観光資源を有効利用したい

・彦根市民として交通面でもやもやしていた所をうまく言語化してくれた

・今ある地域資源を使って少しずつ人が来てくれる場所づくりをしていてすごい

・屋上からのながめに昭和を感じた。先週テレビに出た店があった

・銀座ビルは負の遺産としてしか思ってなかったので活用の可能性は新鮮だった

・格安の家賃で学生やスタートアップを呼び込んでは



火事の際には腰板に金具を引っかけて土壁から引っぺがして蔵を守ったという
火事の際には腰板に金具を引っかけて土壁から引っぺがして蔵を守ったという

 ここからカフェを出て、花しょうぶ通り商店街の古民家を3軒見学させていただきました。ここは重要伝統的建造物群保存地区に選定されており、明治時代の古民家がそのまま残り、使われてもいます。清水家住宅はお住まいの方からかつての絹糸や店舗広告などを見せていただき、当時からの暮らしぶりが伺えました。


 彦根市が管理する古民家は名神高速道路の土地買収事務所や平和堂の事務所となった広大なお屋敷に薪炊きのかまどやお風呂がそのまま残されていたり、4つもある蔵の防火方法など、濱崎先生より詳しく解説いただきました。


参加者の声

・花しょうぶ通り商店街と生きた古民家

・説明や案内をうけることで歴史資源などをより深く知れておもしろかった

・建物の中に入る経験がなかったので新たな学びになりました。外国の方などで好きな人が多いと思うので、活用次第では人を呼べそう。


 この後、ひこね芹川駅まで歩き、そこから桜川駅までは900円のワンデイスマイルチケットを利用して近江鉄道で移動。車内でも対話に花が咲きました。



●桜川 小房、さくらがわ夢の館で活動をお聞きする

桜川駅前にはかつての商店街、おぶさ銀座の店名看板が並ぶ
桜川駅前にはかつての商店街、おぶさ銀座の店名看板が並ぶ

 桜川駅からさくらがわ夢の館へ歩いて移動し、有名なショッパー桜川の海鮮丼をそこでいただき、櫻川駅保存活用プロジェクトチームの西田善美さんから、小学生に地元の歴史を伝える活動を紹介いただきました。


 江戸時代から近江商人は、天秤棒を担いで埼玉県や栃木県経由で江戸と往復する間に商品を仕入れて売り続ける「のこぎり商法」を行っており、これが桜川と東京日本橋とのつながりになっています。御代参街道沿いに建設される予定だった近江鉄道を先人の努力で桜川に誘致し、街に商店街ができて発展し、これが自動車都市化で消えたことなど、街の生い立ちを伝えることは、巣立った子供たちが自分の故郷をしっかりと認識して語れるアイデンティティをつくる未来への活動です。

 また、驚きだったのはかつての集団就職の話で、米原から夜行列車で品川に着いた子供達はプリンスホテルに招かれ朝食をいただき、そこで就職相談会が行われたそうです。近江商人の繋がりで、日本橋(商業施設)、馬喰町(繊維)、醸造に就職する人が多かったとのこと。戦後も近江商人が東京と滋賀を結んでいたことが見えるエピソードでした。

 壁には500年前から地域に伝わる冠句(五七五の上の句だけ定め、詠み合う)に子どもたちが挑戦した作品が貼ってありました。


●桜川駅での活動紹介

古いレールが駅の設備に活用されている
古いレールが駅の設備に活用されている

 また、西田さんは「勝手駅長」を名乗って桜川駅の歴史を子どもたちに伝えています。駅には地域の方が花を活け、駅の開設120周年の2020年には乗降客が楽しくなるように地域の人を誘って大勢のボランティアを集めペンキを塗ったりと駅の整備が進みました。お話からは地域の方々が次々と楽しみながら活動に加わっていった様子が伝わってきました。

 夢の館から桜川駅に戻る間に、かつて鉄道開業で賑わっていた商店街の様子をお聞きし、駅では掃除やペンキ塗りの活動と子どもたちの反応などを現物を紹介しながらお話しいただきました。


参加者の声

・西田さんの地元の子どもに対する気持ちや取組がすてきだと思いました。

・先人の想いなどを知る機会をまちで作っている。地域の方が協力して駅を守っているのが興味深い。

・私たちの駅を手づくりで盛り上げるチームワークのすばらしさ!!



 ここから日野駅までは、西田さんと櫻川駅保存活用プロジェクトチームのお仲間も一緒に近江鉄道で移動。最後の目的地、日野駅舎なないろに向かいます。

途中の駅ホームでは近江鉄道社員の方が作られたかかしを今年も見ることができた
途中の駅ホームでは近江鉄道社員の方が作られたかかしを今年も見ることができた

●周囲を巻き込み、拡大し続ける日野の活動

こうけん舎 西塚さんによる日野駅での取組紹介
こうけん舎 西塚さんによる日野駅での取組紹介

 日野駅では一般社団法人こうけん舎の西塚和彦さんより、日野駅舎再生の経緯の紹介をいただきました。

 近江鉄道が開業した時は貧弱な駅だったものを地域の方々がお金を出し合い駅舎ができたのですが、以後120年その駅舎は放置され、取り壊して簡易な屋根だけにする計画がわかったため、地元民が駅舎保存の運動を開始。総経費約1億3,700万円 のうち85,620,870円は住民をはじめ全国700名からの寄付でまかなったそうで、「じいちゃんの駅を壊されてたまるか」という住民の思いもあったとのこと。

 ただ、駅舎が綺麗になってもまた放置されてはいけないので、観光職員の常駐とカフェ機能を持たせることにされました。平均乗降客500人では採算が合わないので、やりたい人がやれる日替わり店長方式を考案し、カフェ営業が続いています。また、毎年10月にはイベントを大規模に開催し、今年はガチャフェスで「日野が好きだ」をテーマにさらに規模を拡大されます。交通結節とコミュニティ結節を強め続ける活動が主に動画で紹介されました。商店街、高校、行政と次々に関係者を巻き込み共に楽しみながら発展していく様子には、参加者からも「すごい」という感想が聞かれました。


参加者の声

・日野は貴生川から近いけどはじめて下車した。駅舎はすてきだ。

・なないろの活用、運営方法が参考になった。無理なく続けられる。

・高校生とのかかわり方がうまい

・多くの人が関わるなないろはすごいと思いました。

・ガチャフェスは今年は参加したい。もちろん一市民で!


●MLGs交流ワークショップ!

4グループに分かれて意見交換し、発表しあいました
4グループに分かれて意見交換し、発表しあいました

 お話の後は、MLGsの視点を入れて今日の学びをふりかえるワークショップです。

 MLGsとはびわ湖版のSDGsです。交通はMLGsのゴール7「びわ湖のためにも温室効果ガスの排出を減らそう」に関わること、滋賀県下から排出される温室効果ガスのうち2割が自動車由来であること、近江鉄道を活用するなどしてマイカー利用を控えることでMLGsの達成に寄与できることを紹介しました。そして、本会の南村多津恵の進行で、今日見てきたことについて、参加者それぞれの視点から感想が共有されました。


今日の会は三つのゴール達成に結びつく
今日の会は三つのゴール達成に結びつく

 今日の会は沿線をどこでも学びの場とする「コミュニティ・モバイル・カレッジ」として行われ、MLGsのゴール10「地元も流域も学びの場に」、ゴール13「つながりあって目標を達成しよう」とも関連することを紹介しました。



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 最後に再び山田から、自動車都市で寂れてしまった中心街が、歩く街と公共交通の組み合わせで再生している潮流が世界では起きており、インテリジェントアーバニズム(PIU)などの考えや、出雲市や欧州の事例を挙げて簡単に解説しました。

 交通の変化が街を変えてしまったのなら、街の活気は交通を変えることで取り戻せる可能性が皆さんに伝わったでしょうか。

記念撮影 みんな満足感にあふれた顔
記念撮影 みんな満足感にあふれた顔

●アフタートーク

MLGsを意識して、取り皿も使い捨ての紙皿ではなく陶器製でした
MLGsを意識して、取り皿も使い捨ての紙皿ではなく陶器製でした

 プログラム終了後は有志による懇親会となり、今日見てきたこと、これからの交通まちづくりについて、さまざまな話が広がりました。現地に出向き、現物を見て、そこで活動する人から話を聞く。ただそれだけで、知らなかったこと、考えてもみなかったことが見えてきました。

 近江鉄道沿線にはすばらしい人や団体、歴史文化などの資源がたくさんあることを再認識する機会ともなりました。


宇都宮浄人代表が、貴重な近江鉄道上下分離記念の大吟醸を皆にふるまいました
宇都宮浄人代表が、貴重な近江鉄道上下分離記念の大吟醸を皆にふるまいました

 さあ、まちづくりと交通の広場しが2025、この日を皮切りにスタートです。

 8月からはフォーラムやフィールドワークを開催します。ぜひ現場に足を運んで、たくさんの人と交流して、楽しみながら生きた知恵を身につけましょう。ぜひご参加ください!

(やさしい交通しが 山田和昭 補足 南村多津恵


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