彦根フィールドワークのラストは、観光客気分で公共交通に乗って現地をチェック
- yasashiikotsushiga
- 4 日前
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11月23日(日)、「観光交通コンシェルジュを育成する」ことを目的とした彦根フィールドワークの最終回は、彦根のバス環境について学んだ後、彦根周辺をめぐりました。
●公共交通で行ける観光マップを作ろう

この一連のフィールドワークでは、セルフガイドツアー用のパンフレットを作ります。
9月の2回目でまちあるきを体験した後、参加者の意見を集めてスタッフが2泊3日の観光プランを考え、「公共交通を活用した彦根周辺観光パンフレット」の試作版(プロトタイプ)を作ってきました。
この日はそれをより良くするために、実際に公共交通でまちをめぐって、写真を撮りつつ情報を集めます。
●講義「公共交通を活用した彦根のまちづくり」
この地域の公共交通をもっと知るため、はじめに会場のOn Your Markにて、おおつ交通まちづくり推進会の畑中則宏(やさしい交通しがメンバー)から、彦根をめぐる公共交通の現状と、改善のための提案について講義がありました。

彦根でもご多分に漏れず路線バスの廃止が相次ぎましたが、彦根市だけでなく湖東圏域の1市4町(彦根市、愛荘町、豊郷町、甲良町、多賀町)が協力して路線バスや愛のりタクシー(デマンドタクシー)の運行を支えています。この地域の人口規模では運賃だけで黒字にはならないため、行政がバス事業者に補助をして、市民の日常移動を守っています。利用促進のための工夫も様々に行われており、市民生活を守るために行政が意外とがんばっていることを知りました。
観光目線からは、彦根は新幹線の停車する米原駅から在来線でわずか5分でアクセスできるのに、新幹線と在来線、彦根駅から彦根城行きのバスのダイヤがバラバラだという指摘がありました。彦根城行きのバスは少なくても道中に彦根城を通るバスは多く、それなら彦根城に行けるすべてのバスの行き先標示にお城のアイコンをつけると観光客にわかりやすいという提案にはハッとさせられました。また、地域が協力してバス利用客には買い物割引券を発行する、独自で送迎シャトルバスを走らせている病院等はそれを路線バスの活用に振り替えて運賃は無料にするなどのアイディアもいただき、バスを使いやすくし利用者を増やすためにできることはまだまだできることがあると知りました。
このフィールドワークでは最後に観光マップを作ることから、オランダ・アムステルダムの路線マップを見せて、海外では観光マップと路線マップは一体で作られていて、別個に作られる日本のものよりも利用者にとって使いやすいことも紹介されました。
短い時間にすごい情報量で、もっと詳しく聞いて具体的に活かしたいアイディアに満ちたお話でした。
●路線バスと近江鉄道線に乗車
彦根駅に徒歩で移動し、路線バスの彦根循環線に乗りました。乗客がほぼ私たちしかおらず、「貸切バスだったっけ?」という声も飛び出しました。
視覚障害者センター停留所で降車し、歩いて彦根港へ行きました。ここからは観光プラン1日目の多景島クルーズに行くことができます。クルーズ船の乗客は彦根駅からシャトルバスが利用できますが、この日の私たちは彦根港周辺のバスの利用しやすさと観光資源をチェックしました。

それから、歩いて視覚障害者センター停留所へ戻りました。えびす講が行われている彦根市内は渋滞がひどく、そのわりにバスはたった1分遅れで到着しました。このあたりの渋滞は日常化しているとのことで、遅れることを前提としたダイヤが組まれているそう。再び彦根循環線に乗って、1班は彦根城のそばで降りて城下町散策へ。残り2班は彦根駅へ。参加者のほとんどが普段はバスを使わない生活なので、なんと料金を支払わずに降りる人が出るハプニングも。
彦根駅からはさらに五箇荘・愛知川班と鳥居本・佐和山班に分かれ、それぞれ近江鉄道線に乗車。写真を撮りながらチェックして回ります。

私が参加した鳥居本・佐和山班では、鳥居本駅から鳥居本宿を散策して彦根駅に近江鉄道で戻った後、石田三成が城を構えた佐和山のふもとを歩きました。
佐和山の登山口から、清涼寺、龍潭寺、大洞弁財天まで紅葉に染まる山裾を歩き、彦根城の鬼門を守る大洞弁財天の山門から夕日に映える彦根城を見下ろす気分は最高でした。山の中を自分の足で歩いたから出会えた美しさであり、クルマで各スポットをちゃっちゃと訪れるよりも感動は大きかったのではと思えました。

●観光客に公共交通を利用してもらうには
さて、歩いて出発点のOn Your Markに戻って他班と合流し、ふりかえりを行いました。
実際に現地に行ってみて、プロトタイプに足りないと気づいた情報を出し合っていきます。バスや愛のりタクシーの主要経路、駅周辺のレンタサイクル情報、初めての人には難しい近江鉄道の乗り方などが上がりました。
「それでも『公共交通で行こう』と思わせるにはまだ足りない。何を入れたらいいんだろう?」「今日の参加者もクルマで来た人は渋滞に引っかかって遅刻したのだから、『彦根にクルマで来たら渋滞で後悔するぞ』とはっきり書いたらいいのでは」という意見も出ました。
また、公共交通を利用してほしければ、ダイヤを改善したり、今よりも便数を増やすなどのサービスを向上させることが必要だし、事業者が独自に運行しているシャトルバスを路線バスにサービス統合するなど、行政や事業者に対して提案も同時にしていく必要があるのではという話にも展開しました。
●観光交通パンフレットの今後の展望
はじめに提示されたプロトタイプは、今日の議論を元に改定され、11月30日(日)の第5回フォーラムで発表されます。
その後、さらにブラッシュアップして、来春の観光シーズンまでに公開するつもりで作成されるそうです。
完成までにはもうひと山ふた山を超えなければなりませんが、みんなの力でいいものができますように。
そして、出来上がったパンフレットを元に、彦根の交通事情がよい方向に転がるような動きをつくり出せるといいですね。
(やさしい交通しが 南村多津恵)
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