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未来のまちをみんなで描こう! 草津フィールドワーク3回目、活発な意見交換で終了

  • yasashiikotsushiga
  • 2 日前
  • 読了時間: 27分

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今回はエシカルライターSariさんによるリポートです。

 

2025年11月9日、草津市立市民交流プラザ中会議室で、まちと交通の未来づくりフォーラムの草津フィールドワーク3回目を開催しました。

盛り沢山の内容でしたが、ひとつずつご紹介していきたいと思います。

 

■開会挨拶  やさしい交通しが 事務局長 芝 久生


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やさしい交通しが事務局長の芝久生より開会の挨拶として、

「『まちづくりと交通の広場しが』というプロジェクト名からも『広場』を意識し、『まち・暮らし・交通』をテーマに、前回のフィールドワークの結果を共有し、またさらにワークショップを行ってイメージを合わせ、一方通行の講演ではなく、参加者同士が対話する場となり、実践につなげることができたらと思います。」

とイベントの趣旨を説明しました。

 

■知っ得!公共交通の家計簿  松原 光也(名古屋大学大学院環境学研究科 講師)

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続いて、名古屋大学大学院環境学研究科講師の松原光也の講演がありました。

 

公共交通事業者の厳しい現状

バスや鉄道の事業者は現在、非常に厳しい経営状況に置かれています。コロナ禍の影響もありますが、それ以前から利用者の減少が続いており、利用者が減ると運行本数を減らさざるを得なくなり、そうするとさらに利用者が減るという悪循環に陥っています。バス1台を購入するだけで約2000万円かかり、運賃を200円としても膨大な数の利用者がいなければ採算が取れない構造になっています。さらに運転手の人件費や燃料費の高騰が経営を圧迫しています。

しかし、バスが走ることで車を使えない人の移動手段が確保され、環境問題への貢献や地域の活力維持など、社会全体に大きな利益をもたらしているのです。

 

利用が少ない3つの主な原因

公共交通の利用が少ない原因は大きく3つに分けられます。第一に、交通サービス自体の質の問題があります。商品に例えれば、良い商品でなければ買ってもらえないのと同様に、本数が少ない、時間がかかる、遅れるといったサービスレベルでは利用してもらえません。第二に、接客サービス以前のインフラの問題があります。バス停に屋根やベンチもなく、雨の中でも傘を差して立って待たされるような状況は、現代では考えられないレベルのサービスです。これは事業者だけでは解決できず、行政の協力が必要です。第三に、情報提供の不足があります。バスの路線や時刻表の情報が分かりにくく、ネットで調べられるといっても、バス停に来たバスが自分の行きたい場所に行くバスなのかよく分からないという状況があります。

 

支援の取り組み例

各地でさまざまな改善の取り組みが行われています。富山県射水市のコミュニティバスでは、9時から17時まで毎時10分にバスが来るという分かりやすいダイヤを採用したり、伊丹市では地図上に路線を示したバスマップを用意することで、どのバス停で降りればどの施設に行けるのかが一目で分かるようにしたりしています。バス停の整備については、広告会社が広告を出す代わりに清掃やベンチを設置したり、NPOが寄付を募ってベンチを作り協力店舗の前に設置したりする取り組みがあります。国も制度を用意しており、やる気のある事業者には年間約30億円の予算で補助を行っています。ただし、民主党政権時代の事業仕分けで一時廃止され、バスについては復活しましたが、鉄道への手厚い補助はなくなってしまいました。

 

道路と公共交通の不公平な予算配分

日本では道路と公共交通への予算配分に大きな格差があります。道路には年間約8兆円が使われており、そのうち4分の1は一般財源から繰り入れられています。これに対して公共交通には、地方のローカル鉄道やバスへの補助金が約30億円、新幹線や都市の地下鉄建設の補助金を入れても約2000億円弱で、道路予算のわずか2%程度しか使われていません。つまり、公共交通は事業者が自力でやれというのが国の方針となっているのです。この予算格差がサービスの質の差につながっているのは当然のことです。

興味深いのは、ガソリン代を下げる政策に2022年1月から2023年9月まで6.2兆円が使われましたが、これは鉄道とバスの事業者の年間売上合計7.5兆円にほぼ匹敵する金額で、この予算があれば1年間公共交通を全て無料にできる計算になります。

 

事業者の負担比較

道路と鉄道では事業者の負担に大きな違いがあります。高速道路の場合、事業者が負担するのは維持管理費だけで、整備費は税金で賄われ、車両や燃料費は利用者が負担し、運転手の人件費も各自が運転するため不要です。つまり道路会社にとっては非常に有利な条件です。一方、鉄道事業者は維持管理費に加えて、車両も燃料費も運転手の人件費も全て自前で負担しなければなりません。さらに建設時の借入金を少しずつ返済していく必要もあります。近江鉄道のように滋賀県が負担を引き受ければその分が軽減され、黒字になる可能性も出てきます。このように不公平な条件のもとで、車は便利だと言われていますが、これだけ良い条件が整っていれば便利なのは当然です。同じような条件にすれば、鉄道の方がもっと便利にできる可能性があるのです。

 

公共交通の社会的便益

公共交通がもたらす社会的な利益は多岐にわたります。直接的な効果としては、本数が増えることによる利用者の利便性向上に加えて、車を使っていた人が公共交通に移ることで道路の混雑が減少します。さらに環境面では、NOxやCO2の削減に貢献します。これらを費用に換算して、鉄道維持にかかるお金に対してどれだけの利益が生まれたかを分析するのが社会的便益という考え方です。また、公共交通がなくなった場合に必要となる費用も検討されています。近江鉄道の例では、鉄道がなくなると病院の送迎バスやスクールバスが必要になり、道路混雑のための道路拡幅も必要になるため、鉄道を残した方が得だという判断が下されました。ただし、お金に換算できない効果も多くあります。京都駅でバスに乗るために30分も並ぶ状況や、ひたちなか海浜鉄道が震災で止まった時の車での送迎による混乱、子どもが道路で安心して遊べなくなる危険性などは、数値やお金に換算することが困難です。

 

上下分離方式の導入

鉄道を維持する新しい方式として、上下分離という考え方が広まっています。これは施設設備を自治体などが負担し、事業者は運行に専念するという仕組みです。近江鉄道の例では、従来は近江鉄道が車両も土地も鉄道施設も所有して運行していましたが、新しい方式では近江鉄道線管理機構が鉄道施設や車両、土地を持ち、それを近江鉄道に貸して運行してもらう形になっています。その費用は沿線の企業や市民、税金から出ています。京都丹後鉄道も同様の仕組みですが、こちらは日本で初めて民間事業者に運行委託した事例で、利益還元システムを導入している点が特徴です。運営がうまくいって利益が出た場合、自治体に還元される仕組みになっているため、自治体も利用促進に積極的に取り組む意欲が生まれます。近江鉄道の方式だとお金を出すだけで戻ってこないため、市民も無関心になってしまう可能性があり、理想的にはみんなで公共交通を維持していく仕組みが望ましいと考えられます。

 

公共交通と人口減少の関係

鉄道の有無は地域の人口動態に大きな影響を与えています。京都大学での研究によれば、2000年以降に鉄道を廃止した地域と廃止しなかった地域の人口減少率を比較したところ、15年間で約6.7%の差が出ており、1年あたり0.45%の差となりました。どちらの地域も人口減少地域ではありますが、鉄道があることで減少のペースを抑えられる効果があるのです。1人が年間30万円の税収を納めているとすると、人口10万人の都市では年間約1億3500万円ずつ税金が減少していくことになります。この計算は地方税だけで行っていますが、国税や住民が地域で消費する金額を考えると、さらに大きな損失となります。鉄道維持にお金をかけることを「もったいない」と考えて廃止すると、将来的にはもっと大きな損失を招くことになるのです。

 

教育・福祉負担の問題

公共交通事業者は本来国が負担すべき費用まで背負わされている実態があります。通学定期は大幅に割引されていますが、この減収分は事業者が負担しており、全国で計算すると年間約3500億円になります。これは本来、国の文教予算から支出されるべきものではないでしょうか。同様に、障害者割引やバリアフリー化、高齢者割引なども事業者の負担となっています。教育や福祉に関わる費用を民間の交通事業者に押し付けているこの構造は問題です。また、草津線のように本数が少ない路線について、JRに任せていては改善は望めません。JR西日本は完全民営化されており、民間企業として儲からない路線に投資することはありません。仮にJRグループ全体の株を買い戻すとしたら約8兆円かかりますが、これは道路予算と同額です。この予算を公共交通に振り向けられれば、JRを公共の意向に沿って運営できるようになります。

 

公共交通整備の効果(実例)

各地での公共交通整備は具体的な成果を上げています。富山でLRTを整備した結果、公共交通を便利にすることで都市の拡散を防ぎ、行政コストの削減につながりました。沿線に人が住むようになり、高齢者も外出しやすくなったことで医療費の削減効果も見られました。宇都宮では、LRTができたことで中心部への来訪者が増え、年間75億円の消費増加がありました。沿線に住む人が増えて人口が増加し、現代では珍しく小学校が新設されました。さらに芳賀町では工場の誘致に成功し、地価も上昇して税収が増加するという効果がありました。

 

公共交通は「未来への投資」

これらの事例が示すように、公共交通への投資は単なるコストではなく、地域全体を良くする投資として捉えるべきです。環境に配慮し、人口減少を抑制し、地域経済を活性化させる効果を考えれば、公共交通への投資は長期的に大きなリターンをもたらすのです。

 

 

■班別フィールドワークの報告会

続いて、班別に開催した「草津フィールドワーク2回目」について、3つのグループから報告がありました。

 

A班報告「公共交通と自転車で快適なまち」(11月2日開催)

南村 多津恵(輪の国びわ湖推進協議会 運営委員)

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A班は、南村 多津恵 (輪の国びわ湖推進協議会 運営委員)より報告しました。参加者8名で草津駅を自転車で出発し、旧草津川沿いのサイクリングロードから琵琶湖岸、矢橋帰帆島、南草津駅、旧東海道と進みキラリエ草津まで約16kmをサイクリング。途中の自転車道、歩行者自転車専用道路、車道の走り易さをチェックしながら、草津市がやっている「謎解きサイクリング‐温泉ないけどいいとこ草津-」というプログラムにも参加して交流を育みました。

キラリエ草津でふりかえりミーティング。みんなで感想をシェアしてみると、

•自転車は気持ちいい。どこにでも行けそう。

•草津市内をめぐるのは楽しい、暮らしやすそうなまち。

•自転車用に整備された道は走りやすいけれど、生活道路は車優先で走りにくい。

•車が多い道の車道はこわくて走りたくない。

•青切符制度の導入で歩道を通れなくなったらどうしたらいいんだろう?

•どこを走っていいのかわからない場所が多々ある。

•自転車の走り方のルールがよくわからない。

以上のような声があがりました。

 

最後に、輪の国びわ湖推進協議会 藤本芳一会長にミニ講義をお願いしました。

世界では自転車は車道を走るのが当然。日本は自転車を歩道に誘導してしまったことから、道路はクルマのもの=クルマ優先の意識が定着した。自転車の事故率は、歩道通行の方が車道よりも高い。自転車は車道を走るとルールを守って走るようになる。交通は弱者優先。自転車先進国では、道路を歩行者・自転車・公共交通・車で平等に分け合っているといった情報提供があり、「ルールを守って車道を走ろう!」と締めくくられました。

 

C班報告「ワクワク新交通システムと未来のまち」(11月4日開催)

  芝 久生(やさしい交通しが 事務局長)

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C班は芝久生(やさしい交通しが 事務局長)から報告しました。南草津駅に集合後、連節バスに乗車して立命館大学びわこ・くさつキャンパス(BKC)へ。そこからは貸切タクシーで、びわこ文化都市公園ゾーンを周回視察してから、BKC内トリシア1F会議室にて、この地域での「新交通システム」の検討経緯について説明を聞き、ディベートを行いました。

Aチーム:賛成「この地域には新しい交通システムの導入が必要」

Bチーム:反対「新交通システムの導入は必要なし、今の公共交通と車でいい」

 

賛成派からは、

①一口に新交通システムと言ってもLRT*、BRT**、都市型ロープウェイなど様々。住民の便利さ確保に向けて、予算にこだわらず前向きに進めるべき。

②定時性は重要な要素であり、新交通システムでそれを解決できる。

③自動運転・スマート技術などにある既存の枠組みでは解決できないことも、新交通により解決するかも(期待値) 

④住民理解は必要。しかし、それにとらわれず進めよう。⑤10年後の地域の魅力アップに向けて進めることが鍵(ワクワク)。

といった意見が出されました。

一方で反対派からは、導入予算に見合う効果がないという意見が多数出されました。

①学生がLRTを使っても経済的効果は少ない。

②先行したバス活用促進策が立命館大学や企業にあり、600億円の投資に見合わない。

③既存路線でまかなえる。→軌道系よりも、既存交通の向上がポイント!


賛成派、反対派による熱い議論が展開されました。

議論の中では、「公共交通の利用により、子どもに自分で移動することを学ばせたい」「公共交通を発達させることで車利用を削減したい」「新交通システムの実現には政治的決断も必要」「道路の建設には賛成か反対の議論すらされていない」といった意見も出ていました。

*LRT(Light Rail Transit)軽量軌道鉄道、または次世代型路面電車システム

**BRT(Bus Rapid Transit)バス高速輸送

 

D班報告「バス活用で楽々移動・各所にも行けるまち」(11月4日開催)

  大塚佐緒里(草津おみやげラボ 代表)

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D班は大塚佐緒里(草津おみやげラボ 代表)から報告しました。南草津駅に集合し、路線バス・まめバスで木瓜原遺跡から草津PAをめぐり、南草津駅での暮らしと学びを体験しました。


南草津駅での体験

駅西口では、ちょうど学生グループが駅近の公園を使った実験イベントを実施中で、手作りハンモックで遊ぶ親子連れの姿があり、駅周辺に人が集まる場所をつくることの重要性を実感しました。話に夢中になったせいで当初予定していたバスに乗り遅れ、20分後のバスで立命館大学に到着しました。

かがやき通りとその周辺

かがやき通りは「夜の渋滞時に車のライトが輝くから、かがやき通り」などと揶揄されているエピソードも。通勤時間帯は渋滞が激しくバスも遅延しますが、学校、病院、買い物施設が充実しており、時間の制約がなければ住みやすい環境です。

立命館大学のグラウンド地下にある古代の製鉄所遺跡をボランティアガイドさんの案内で見学しました。平日に事前予約すれば見学可能で、今後見学会を企画したいと考えているとお話もありました。

クレスト草津のバス利用

大きな学生マンションであるクレスト草津のバス停は、午後3時でも多くの学生が利用しており、ニーズが高い場所でした。学生によると、南草津方面行きのバスは複数路線があり、間違えないよう注意が必要とのことです。

全体的な振り返りと課題

参加者からは「草津っていいな」という声が多く聞かれましたが、いくつかの課題も見えました。山手エリアの住民がイオンや病院に行く際、東口から西口を経由する必要があり、バス路線が分断されています。地下通路があるのに活用されていないのは残念です。まめバスは住宅街を回るため時間がかかり、時間に余裕がない人は車を使わざるを得ません。この日案内した駐車場も満車で、公共交通と自家用車の利用バランスは難しい問題だと感じられました。

 

■未来へのチャレンジワークショップ

 コーディネーター:上田 洋平 (滋賀県立大学地域共生センター 特任講師)

 ゲスト:清水 省吾 (交通ライター)

 コメンテーター:山田 和昭 (日本鉄道マーケティング 代表)

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後半は、上田洋平(滋賀県立大学地域共生センター特任講師)がコーディネーターを務め、「未来へのチャレンジワークショップ」を行いました。


冒頭で、草津の地域住民により描かれた「記憶絵」数点の紹介がありました。昔の草津の風景を現在と重ねながら、エイスクエアのある辺りは競馬場だった話などで盛り上がりました。


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参加者は4つのグループに分かれ、自己紹介として自分の人生と交通との関係を折れ線グラフで表現するというユニークなアイスブレイクが行われました。

 

【交通まちづくりで市民が果たす役割~福井における事例から考える】ワークショップの中盤では、ふくいの路面電車とまちづくりの会(ROBA)メンバー 清水省吾(交通ライター)より、福井における市民活動の事例紹介があり、山田和昭(日本鉄道マーケティング代表)がコメンテーターを務めてのディスカッションを行いました。

 

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福井のトラムトレイン実現

2016年に福井鉄道とえちぜん鉄道が低床車両による相互乗り入れを実現しました。トラムトレインとは、路面を走行するLRT車両が既存の鉄道路線を活用することで、大規模な新規建設なしにLRTネットワークを構築し、郊外住民を都市中心部に運ぶ交通システムです。福井では田原町駅を起点に26.9キロメートルにわたって相互乗り入れが行われています。福井は交通利便性向上の中心施策としてパークアンドライドを採用しており、2社3路線で1400台規模の駐車場を整備しています。

LRT化までの経緯と市民の覚醒

2000年12月と2001年6月に京福電鉄が2度の正面衝突事故を起こし、2度目の事故当日に国が即時運行停止を命じました。地域全体が混乱に巻き込まれ、通勤渋滞の激化、家族の送迎負担、子どもの進学制約など深刻な影響が生じ、これが「マイナスの社会実験」と呼ばれる鉄道の再評価につながりました。この問題の深刻さが地域住民の当事者意識を覚醒させ、同時に多くのコーディネーター役が出現したのがこの事例の特徴です。沿線では多くの市民団体が立ち上がり、存続の合意形成活動を展開しました。異なる役割をそれぞれが果たし、大きな連携が生まれました。

ROBAの活動と合意形成

市民団体ROBAは、コーディネーター役、議会対策などの政治的条件整備を担いました。鉄道誌に投稿した文章が県民会議結成のきっかけとなり、存続問題の解説資料作成が評価されてテレビでの情報発信ができるようになりました。県職員が相談を持ち込んだ費用便益分析をROBAが県に提案し、それが採用されて存続の決め手となりました。当初、県議会では廃止論が圧倒的多数で存続は不可能と言われていましたが、ROBAメンバーの県議会議員が役割・責任分担と一体の上下分離方式(後の福井型上下分離の原型)を着想し、県議会最大会派がこれを採用したことで議論が存続へと変わりました。

福井市議会への働きかけ

沿線市町村議会では県の方針に対する反感が出て、福井市議会で廃止決議が出る可能性がありました。勝山市民会議が福井市内の4つの連合自治会長に呼びかけ、市民連合と自治会長が福井市議会議長への陳情について協議しました。翌朝、テレビ局記者がセッティングした4連合自治会長と福井市長、福井市議会議長との面談をマスコミ各社が大きく報じました。この事例では、情報やノウハウを持つ人たちと当事者意識を持ち勉強した住民が噛み合い、それぞれの役割を担ってみんなで世論を動かし合意を形成したことが重要な経験となりました。

えちぜん鉄道の発足と利用者のV字回復

えちぜん鉄道が発足し、新しい地方鉄道像を示しました。利用者がこれを評価し、乗客数は運行停止期間を経てV字回復しています。この事例は各方面から評価を受け、多くの賞を受賞しました。

福井鉄道のLRT化と相互乗り入れ

相互乗り入れによるLRT化は2003年の市長選マニフェストに初めて登場しました。2006年にROBAメンバーの県議会議員が福井市長選で当選し、LRT化を打ち出しました。しかし福井鉄道は国の会計制度変更による減損会計導入が存廃問題の引き金となり、再び沿線で存続の合意形成活動が活発化しました。市民と行政が協働して活動が盛り上がりを見せる一方、国の検討会が福井鉄道のLRT化に関する費用便益分析を実施し、福井鉄道のポテンシャルについて認識を共有できました。特に道路混雑緩和便益が非常に大きいことが明確になりました。

市民活動の重要性

社会には誰も担っていない機能が必要になることがあり、多くの場合その役割を担うのがNPOです。NPOには多様な特性を持った人が集まり、表に出たり裏方を務めたりしながら、人と人、団体と団体の間に入ってコーディネーター役を担います。ROBAは交通まちづくりでの市民サポート、事業者・行政と市民の間の通訳、誤解や無理解に対する防波堤、鉄道存続の合意形成から切れ目のないモビリティマネジメントへの展開などを行ってきました。2000年に福井市がフォーラムを開催して市民団体誕生を仕掛け、参加メンバーが市民団体を作ったのが始まりで、2005年にNPO法人となり、2023年に一通り仕事を終えて任意団体に戻っています。25年間、市民が必要とする情報を講演会などで提供し、公共交通の利用情報を提供して利用促進を図ってきました。

 

滋賀県との比較と今後の課題

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清水の報告後、山田から滋賀県と福井県の違いについて、近江鉄道の場合は存廃問題として明確に提起されなかったため、危機感による市民の盛り上がりがなかったと指摘しました。行政と事業者の間で話し合いが進み、市民が置き去りになったという課題があります。存続が決まったことは良いことですが、利用したり便益を受けたり税金で支えるのは市民であり、市民置き去りのまま決まったことには問題があるため、現在このような活動が必要になっているとしています。

清水は、ROBAが全てをプロデュースしたわけではなく、住民が当事者意識を強く持ったことが最も重要で、ROBAは裏方的な仕事をしていただけだと強調しました。滋賀県も実質的には存廃問題という課題に直面していた状況は福井と同じであり、多くの人が動いて現在に至っていることは新しい先進事例を作ったことになると評価しました。

市民の役割とコーディネーターの姿勢

山田は市民の役割について、市民は利用者であり便益を受ける人であると同時に、運賃や税金を負担する人でもあり、駅前で商売をするなど経済的メリットも得る存在だと説明しました。負担もするが利益も得るという関係性を、普段は空気のように意識していないが、この部屋から空気が消えたらみんな死ぬように大事なものだと例えました。まず意識することが重要で、その上でちゃんとした議論ができるようになると述べました。

清水からコーディネーターについては、福井では浄土真宗の人脈が基盤となり、何か問題が起こると市民が連携する土地柄があったこと、行政、議員、NPOなど様々なところからコーディネーター役を果たす人が多数出てきたことが特徴的だったと説明しました。使命感を持った人がコーディネーター役を買って出て、大勢湧いて出てきた状態だったとのことです。山田は、滋賀県でも石けん運動などのように運動が活発になるポテンシャルはあるとし、そのような潜在的な人材がいるが、まだ交通という問題には気づいていない、関わりのきっかけがない状態ではないかと指摘しました。

 

【公共交通によって実現する/したい自由】

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ワークショップの最後には「公共交通によって実現する/したい自由」をそれぞれ5つあげて、今回のイベントの集約とする話し合いが行われました。出された意見をまとめてみます。

 

移動の自由とアクセシビリティの保障

行きたいところへ思いどおりに行ける、行きたい時間帯に必ず選べる移動手段があることが基本的な自由として挙げられました。特に移動困難者(子ども、高齢者、障がい者)が自由に移動できることは、周囲の人の自由にもつながります。車を運転できなくても行きたいところに行けること、LRTによるバリアフリーな移動が実現されること、自転車との連携で行動範囲が広がることなどが挙げられました。乗り継ぎ時に困らないサービスがあり、歩く、自転車、公共交通という移動の選択肢の中に公共交通が常に入っている状態が理想だと話されました。

経済的自由と時間の有効活用

コスト低く、できれば無料で移動できることは経済的自由につながるという意見も出ました。車の維持費は大きな負担であり、公共交通が充実すればこの負担から解放され経済的に安心できます。また、移動中に仕事をしたり、くつろいだり寝たりと、自分の時間として過ごせることは、車の運転では得られない本当の自由だという声が多く出されました。移動時間を仕事や趣味、飲酒などを楽しむ空間として活用できることで、時間をより有効に使えることが共有されました。

人のつながりとコミュニティの活性化

公共交通は単なる移動手段ではなく、地域コミュニティを活性化させ、まちの人を笑顔にする力があるという意見もあがりました。好きな人と一緒に移動できること、旅行中に隣の席の方との会話や待合所での井戸端会議など、移動空間が居場所や交流の場になり、時にはお酒も酌み交わしながら公共交通を利用することで町に愛着が湧き、賑わいのあるまちづくりにつながることが共有されました。

まちの環境改善と安全性の向上

公共交通が充実すれば交通渋滞が減り、歩道や自転車道が広がるという意見も出ました。国道によるまちの分断が改善され、車にひかれる心配のない安全な環境が実現。交通事故が減少し、環境に優しい世界(NOx、CO2削減)が実現されることで、持続可能な社会づくりに貢献するとも。また、徒歩移動が増えることで健康増進にもつながり、歩くことが増えて健康になれるという副次的な効果も期待できるという声もありました。

観光と地域振興

旅行時の便利な移動手段として公共交通が充実すれば、観光列車の増加により公共交通への興味が高まるという声もありました。学べる周遊したくなる案内板(記憶絵のような)を整備することで、地域の魅力を再発見する機会も生まれます。バス停にパーク&ライド駐車場や駐輪場を設置し、バス停の快適性を向上させることで、より多くの人が利用しやすくなるのではという意見もありました。

 

【実現のためのアクション】

最後にまとめとして、さまざまな壁を乗り越えて一層大きくまちの交通を自由にするためにどんなアクションをしたらよいか話し合い、以下のような意見が出ました。

まず自分が乗る・使い続ける

最も基本的で重要なアクションは、まず自分が公共交通に乗ることだという意見が多くでました。運転免許を持っていても可能な限り公共交通を使い続けることで、利用者としての存在を示し、それ自体が発信になると。滋賀県でも色々な取り組みがされていても、住民が把握しきれていない現状があるため、実際に体験することが重要だと話されました。

情報提供と利用促進の仕組みづくり

非利用者にまず乗ってもらうために、無料デイの実施が効果的だという意見も多く出ました。定時性の確保、パターンダイヤの採用、バスロケーションシステムの導入により、利用しやすい環境を整えることも重要だと話し合いました。料金を乗る前に分かりやすく提示し、バスの乗り方の情報を提供することで、初めての利用者の心理的ハードルを下げる必要があるとの意見もありました。時刻表・マップ・検索機能を充実させ、「バスに乗ったらこれができます」という具体的な情報を提供することで、公共交通の価値を伝えることが必要とも。自由降車区間の設定や、バス停の快適性向上のために近くの店舗と協力するなど、利用しやすさを高める工夫が重要だと共有されました。

市民の声を上げる・市民活動への参加

問題意識を持っている人が声を上げて市民運動を展開し、もっと公共交通にお金を出してほしいという要望を伝えることが変化のきっかけになるという意見もありました。署名活動などを見つけたら参加し、フォーラムなどの開催を通じて一般の人たちに知ってもらう機会を作ることが大事だと。地域で顔なじみを増やし、潜在ニーズ(クルマを利用しない人は子どもも含めれば3割になる)の意識を高めてもらう活動を展開。記憶絵のような地域の取り組みを盛り上げることで、地域への愛着を育てることが大事だという意見でした。究極の市民活動として、行政がやらないなら自分たちで公共交通を運営してしまうという選択肢もあがりました。醍醐コミュニティバスのように、地域住民が困った時に自分たちでバス運行を始めた事例も紹介され、地域の人たちで公共交通を維持することも可能だという話も出ました。

行政・専門家との連携

行政の交通政策担当者に実際にバスに乗ってもらい、現場を理解してもらうことが重要だという意見も出ました。公共交通の専門家を育てて市町に派遣することや、そうした体制を整えることが必要。市町職員は教育や福祉など総合的な視点を活かして調整してほしいと。福井のROBAのように、コーディネーター役として事業者・行政と市民の間の通訳を務め、誤解や無理解に対する防波堤となる市民団体の存在も重要だという話が出ました。

車社会からの転換

カーシェアやレンタカーをうまく利用することで、個人の車所有を減らし、少しずつ車社会を落ち着かせていくことも重要だと話されました。パーク&ライド駐車場を整備し、郊外から公共交通への乗り換えを促進することも重要だと。民間によるマイバス停の管理など、地域が公共交通を支える仕組みを作ることも有効だという声もありました。住民同士の助け合い交通や町内会の活動も公共交通の一部であり、システム全体として循環させることが重要だという声もあがりました。自動運転などの新技術と組み合わせ、住民と行政が一緒になって取り組むことで、公共交通だけでは実現できない部分を補完できるという意見も出ました。

 

■講評  塩見 康博(立命館大学 教授、滋賀地域交通活性化協議会 会長)

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塩見康博の講評では、まず大学教員として今回のワークショップを通じて自身の教育の役割を再認識した話から始まりました。学生が若いうちからこうした問題意識を持ち、公共交通の重要性を理解することの大切さを痛感し、自分の仕事をしっかりやらなければならないと強く感じたと述べました。

各講演から得た気づき

松原の講演からは、特にガソリン補助金の話が印象に残ったと語りました。ガソリン補助に使われていた予算を公共交通に回せば、全ての公共交通を無料にできるという指摘は重要なポイントでした。

道路研究者として、国の道路政策が変わりつつあることにも言及しました。2023年に発表された「WISENET(ワイズネット)2050」という2050年に向けた道路政策では、パフォーマンスマネジメントが目玉となっています。従来は交差点の渋滞対策といった局所的な改善に焦点が当てられていましたが、新しい方針では移動そのものを単位として道路サービスを捉える視点に変わりました。この考え方に立てば、移動のサービスを向上させるためには公共交通を組み込む必要があり、それによって初めて道路の潜在的な能力が発揮されるという理屈が成立します。塩見は、道路の側から公共交通を考えるというアプローチを理論的に体系化し、説得材料として根付かせていきたいという思いを新たにしたと述べました。

清水の講演からは、市民活動と行政との連携が重要なポイントであることを再認識しました。山田からも言及された滋賀県の石けん運動の歴史に乗じて、特に近江八幡の八幡堀の事例に触れました。八幡堀は当初埋め立てて駐車場にする計画でしたが、市民活動によって「八幡堀を失ったら近江八幡のアイデンティティがなくなる」という認識が広がり、再生につながりました。この事例は、滋賀県民には問題意識をしっかり持てば変えられるという県民性があることを示しており、この点を再認識したということでした。

メディアの役割と課題認識の共有

マスコミとの関わり方も重要な論点として挙げられました。最近ホットな話題となっている交通税について、報道では交通税そのものの是非ばかりが取り上げられ、なぜ交通税の議論が必要なのかという背景にある交通課題があまり報道されていないという問題を指摘しました。課題と解決策を並べて取り上げないと議論が深まらないという認識から、市民目線でしっかり発信する場の重要性を強調しました。

この場から少しずつ、自分なら学生に、参加者それぞれが家族や友人に、じわじわと広げていくことで課題認識が共有され、「このままではまずい」という共通理解ができれば、何か第一歩を踏み出せるのではないかと、期待を込めてまとめられました。

 


 

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【筆者の感想】

講師の話からは多くの学びがあり、ワークショップを通じて参加者同士の意見交換もでき、交流も図れた、本当に充実した内容だったと思いました。このイベントをきっかけとして滋賀の交通の未来がもっと良くなっていくことを願います。

(エシカルライター Sari)



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